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これでいいのか リニア中央新幹線の進め方

NPO法人環境文明21の会報『環境と文明』10月号の巻頭言「風」に「これでいいのか、リニア中央新幹線」と題して、進み始めたリニア新幹線に対する疑問を率直にぶつけた。その内容は、本ブログ4月26日付に表明したのとほぼ同じであるが、一口で言えば、①東京・名古屋間40分、東京・大阪間67分という速さはなぜ必要か、②乗客の見込み数は過大見積りではないか、③従来の東海道新幹線などへのサービス低下の懸念、④リニアを動かすエネルギーは確実に確保できるのか、⑤関係者以外の多くの国民が内容をほとんど知らないという問題などである。

その疑問を付して、JR東海の葛西会長、国土交通大臣、同省の鉄道局長らに私の意見として文書にして書き送った。それから、一か月余が経過したが、予想した通り、これまでに返事はどこからも来ていない。

JR東海の偉い人たちは、リニア中央新幹線については、国土交通大臣から5月27日に「建設指示」が出た以上、反対があろうがなかろうが、乗り越え踏み越え、ひたすらこの事業をやり遂げる意志でいるのであろう。まして、一介のNPO代表などからの質問など一顧だにする価値もないということかも知れない。

私は、手紙に対しての反応が無いことに腹を立てている訳ではない。このリニア中央新幹線が、未来の日本の基幹鉄道として、果たして機能するのかどうかを改めて多方面から徹底的に議論してほしいために書き送っているのである。

東京電力の福島第一原発の惨事を迎えて初めて、多くの国民は真剣に原子力発電の危険性と向き合うこととなった。建設当初から、少数とは言え、科学者や専門家から原子力発電そのものの安全性や、地震、津波などに対する備えの足りなさについて警告が発せられていたが、その警告は、原子力発電推進の前ではほとんど聞き入れられず、無視されていた。その挙句の果てのとてつもない事故である。その失敗をリニアで繰り返してはならない。

日本の誇るべき鉄道技術、しかも9兆円を超す事業計画になろうとしている以上、意味ある事業であり、未来を指し示す事業になってほしいと強く願っている。そういう観点から危惧を表明しているのである。ごく簡単に言えば、今予想している程の乗客を確保出来るであろうか、その結果、料金はいくらぐらいに設定されるのか、地震や火災などあらゆる「想定外」的災害に対する対策が真剣に考えられているのか、また、東京・大阪間の8割程度がトンネルになるとのことであるが、そのトンネル内の安全の確保(例えば車両火災、停電など)は確実なのか、国民が知りたいことは山程あり、積極的に国民的議論を行うべきである。それをしなければ、やがて今回の原子炉事故と似たような経過を踏み、結果的に国民に大きなツケをまわすことなりはしないかと危惧するのだ。

今からでも遅くはない。リニア中央新幹線問題を幅広く議論し、計画の廃止を含め、大胆に見直すべきである。
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by JAES21 | 2011-11-14 17:17 | 加藤三郎が斬る
2011年10月号巻頭言『風』
これでいいのか、リニア中央新幹線

加藤三郎

多くの国民が、3.11後の震災・津波被害の激甚さや東電福島第一原発からの放射線汚染の深刻さに関するメディア報道に気を取られていた最中に、国民の将来の公共交通手段にとって極めて大きな影響を与えることになるであろう一大プロジェクトが静かに動き出していた。それは、国土交通大臣が、交通政策審議会の答申を受けて、本年5月27日、JR東海に対し、リニア中央新幹線の建設指示を行ったことである。

整備計画の概要は、超電導磁気浮上方式を採用し、最高時速505km、南アルプスの下をくぐり抜け、東京・甲府・飯田・名古屋・奈良・大阪などを結ぶという。工事は2014年度に着工し、名古屋までは2027年に、大阪までは2045年に開通する計画。この建設費用9兆円余は、途中の駅舎建築費を除いて全額をJR東海が負担するとのこと。

東京・名古屋間は40分、大阪へは67分で結ぶ超高速で、メディアは、いよいよリニア時代の開幕と歓迎の論調が目立ったが、鉄道ファンである私にとっては、とても喜べない深刻な疑問がある。

その第一は、何故そんなに速く走らねばならないのか、である。もちろん、人間の本性として、出来るだけ早く目的地に着きたい、世界最速のスピードを享受したい、というのは自然であろう。日本の鉄道はたゆまぬ技術の進歩を重ね、1964年に開通した東海道新幹線は、東京・大阪間を、こだま5時間、ひかり4時間で結び、その後順次所要時間を短縮して、今やのぞみ号を利用すれば2時間30分前後で、大阪に辿りつける。それをさらに速くして、航空機や自動車と優位に競争したいと鉄道事業者が考えるのも無理からぬことかもしれない。しかし、それは、科学技術の進歩を無制限に追求した20世紀型の思考法であり、やり方ではなかろうか。物には限度がある。名古屋までの40分間、コーヒーをゆったり味わう間もない内に着いてしまう。そこから大阪までの27分、弁当を食べる時間もない。そんなに速く着く必要のある人はどれほどいるのかという疑問は消えない。

第二は、東京・大阪間の利用者の数を過大に(敢えて言えば水増しして)、見込んでいるのではないかとの疑問だ。2005年時点で、東京・大阪間の利用者は年間442億人キロであったものが、本計画では、リニア新幹線だけで、408億人キロ、それに、在来型の東海道新幹線もあるので、ここに254億人キロ程度加算される。つまり、約660億人キロの需要を見込み、現在よりも、1.5倍の人が行き来することになる。

しかしながら、日本は、人口減少局面に入っている。人口専門機関の中位予測によれば、2030年には、日本の総人口は現状よりも約1,300万人減り、2050年には、なんと3,800万人ほど減る見込みだという。しかも、高齢化率は、現在の23%が、2030年には32%、50年には、約40%にならんとしている。つまり、人口総数が大幅に減り、高齢化が進み、しかも、インターネットの通信手段も進化し、ITを利用した会議などが一般化しているであろう中、何故これほどの交通需要を見込めるのだろうか。

JR東海によれば、開通時の運賃は、現行運賃よりわずか1,000円程度の上昇で済むということだが、その秘密の一つは、乗客数の過大見積りではなかろうか。

第三の疑問は、このようなリニア新幹線が、開通した場合、在来型東海道新幹線のサービスレベルはどうなるのか、だ。JR東海としては、リニア新幹線を大幹線として乗客をかき集めることになるだろうから、どうしても、在来の新幹線はローカル化し、運行本数や間隔などのサービスは低下せざるを得なくなるのではなかろうか。この沿線には、静岡、浜松、岐阜、大津、京都などの中核大都市がいくつも存在している。リニア路線からはずれる京都を含むこれら都市へのサービスがどうなるのか。

第四に、リニア新幹線の運行には従来型の新幹線に比べ、ラッシュ時には約3倍の電力を必要というが、開通する頃には、原子力発電の比率が低下(ないしはゼロ)しているであろうなかで、安定した運行が可能かどうかも気になる。JR東海の葛西会長が、5月24日付産経新聞紙上で「腹を据えてこれまで通り、原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない。(中略)今やこの一点に国の存亡がかかっている」と力説しておられるのは、リニアのことが頭にあるのかなと私はつい思ってしまう。

この他にも南アルプスの下をくり抜いて走るリニアについては、自然環境への影響、あるいは、強力な磁気の人体への影響、大深度のトンネル走行中の車両火事など、心配ごとは沢山ある。

以上のような個々の疑問だけでなく、そもそもリニア中央新幹線の事業内容については、私の周辺でもほとんどの人が知らない。事実上、限られた審議会での専門的な議論によって計画が作られ、事業化され、否応なしに、それは将来の日本の動脈にも大きな影響を与える。原発問題が「原子力ムラ」と言われる限られた人々の間で計画され、実施されたが、結局、今回の原発事故のような、とてつもない被害を多くの人に与え続ける例もある。将来、仮にリニア新幹線の経営が行き詰ってしまえば、国民へいろいろな形で負担が発生することは避けられない。英・仏が運行した超音速コンコルドの破綻の例もある。それを避けるには、全てをオープンにし、多くの人がこの問題について、多方面から検討し、納得のゆく事業(廃止も含め)になるようにしていくべきだと強く感じている。
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by JAES21 | 2011-10-25 16:30 | 会報巻頭言『風』
「原子力村」は他にも

東京電力福島第一原子力発電所の大災害を巡る報道によって、多くの人が「原子力村」の存在を知らされたようだ。

この「原子力村」とはどんな村かと、私なりに想像してみると、東京大学工学部原子力工学科を卒業した人たちが中心となって、原子力技術者が芯を固め、その周辺に巨大な原子力予算に群がる業界、族議員、学者、メディアなどが形成するかなり閉鎖的な組織のようである。この組織の特長は、原子力推進を「国策」と位置付け、その名の下に多くの国民の安全への疑問や批判を許さず、この地震列島の上に54基もの原子炉を作るのに大きな役割を果たした。同時に今回の大崩壊の原因を自ら作った。

しかし、考えてみると、日本の社会には何も「原子力村」だけがあるわけではない。他にも、いろいろな「村」がある。「県人会」「学閥」などもその小さな一例ではなかろうか。

私が今、もう一つ気になっているのは、「リニア新幹線村」のことである。震災・原発事故のどさくさにまぎれたわけではなかろうが、去る5月12日、国土交通省の交通政策審議会小委員会は、JR東海のリニア中央新幹線建設計画に対して、ゴーサインを出した。

しかし、その内容を見ればみる程、疑問点、しかもかなり深刻な問題点が沢山見える(4月26日付ブログ)。関係者の間だけでの検討や議論は長いことなされただろうが、この計画そのものに素直に疑問を感ずる人を含めて、国民規模の大規模な検討がなされたとは寡聞にして知らない。このやり方を見ていると、JR東海周辺に「リニア村」と呼ぶべき、排他的で強固な集団があるのでは、とつい想像してしまう。リニア中央新幹線の建設計画はJR東海という一企業の事業計画案とは言え、それが実施されれば国民の多くに影響を与える。私たちが懸念するように、それが失敗をしたら、結局、最後は料金の上昇や税金で国民が面倒を見るということになる。そのことを思うとやはり、心配でならない。

「原子力村」の今回の無残な結末を見れば、リニア中央新幹線計画についても「リニア村」の住人だけに任せず、様々な方向からの議論をして事業を固めて(廃止や変更も含め)しかるべきだと思う。今、ここでしっかり議論をしておかないと後になってとんでもないツケが国民に降りかからないとも限らない。

最後に一言付け加えておくと、私はリニアという技術そのものを拒否しているわけではない、例えば、羽田・成田間をリニアで結ぶというアイデアは検討に値するのではなかろうか。
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by JAES21 | 2011-05-26 13:32 | 加藤三郎が斬る
リニア中央新幹線への深刻な疑問(1)
 去る4月21日、JR東海のリニア中央新幹線建設計画に対し、国土交通省の交通政策審議会の小委員会がゴーサインを出した、と22日付朝日新聞で伝えている。私自身は、かねてからリニア技術による長距離鉄道輸送に疑問を抱いていたが、リニア中央新幹線の計画が大筋固まり、今後は環境アセスメントの実施を経て、2014年の着工がいよいよ視野に入ってきたので、改めて、この計画に対する疑問をぶつけておきたい。

①東京大阪間の438kmを67分で結ぶ(平均時速392km、最高時速500km)との計画であるが、何故、鉄道がそれほどまでに「速く」なる必要があるのか。(東京―大阪間552kmを平均時速230km前後で結んでいる現在の「のぞみ」でも、大地震時などを考えると危険なほど速すぎると考えているのは私だけではない。)

②乗客の需要見込みが、過大ではないか。(現状で440億人キロ程度であるのに対し、2045年時点でリニアと在来型の合計需要が580~820億人キロとの見込み)もちろん、料金設定にもよるが、東京、甲府、飯田、名古屋、奈良、大阪を結ぶ予定の路線にそんなに多くの客が利用するとは考え難い。まして、本線開通予定の2045年(名古屋までは2027年)の頃になると日本の人口は大幅に低下し、高齢化が進み、経済活力の衰えが見込まれる中で、何故、これほどの需要を見込めるのであろうか。

③東京、名古屋、大阪間には在来型の新幹線も運行されるが、そのサービス(運転間隔、料金など)が低下するのではないか。在来型新幹線には静岡、浜松、豊橋、岐阜、京都などの大都市がずらっと並んでいるが、中央新幹線が出来たあかつきには、好むと好まざるとに関わらず、在来型新幹線は、ローカル線化していかざるを得ないのではないか。そのサービス水準をどう考えているのか。

④運転は指令室で管理するので、個々の列車に運転手は乗っていないとのことであるが、事故や地震などの災害時の対応はどうなるのか。特に、深度の深いトンネルの中で停電や火災でも発生した場合は乗客をどう避難させるのか。
 
⑤電磁波による健康影響はどうなるのか。JR東海では問題ないとしているが、それは科学界のコンセンサスだろうか。さらにリニア新幹線は、在来の新幹線に比べて数倍の電力を使うと聞いているが、その具体的な数値はどのようなものか。



これらの疑問が、クリアになるまで、鉄道ファンであり、乗り物ファンである私でも、リニア新幹線問題に対しては、極めて懐疑的なスタンスを取らざるを得ない。リニア新幹線問題については、今後も随時取り上げてゆく。
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by JAES21 | 2011-04-26 15:22 | 加藤三郎が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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