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  環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

技術はあれど、それを伸ばす見識も政策もないのか
日本は今、いろいろな面で衰退現象が目立ってきている。GNPで見て、昨年中国に追われて、3位に後退したというのは、その代表例であるが、その他にも、様々な面で、「Japan as No.1」と言われたかつての勢いは消えてしまった。

しかし、そのような中で、多くの日本人は、日本の環境技術、環境政策は、まだ世界に冠たるものであると思っているのではなかろうか。確かに、省エネ、リサイクル技術をはじめ、ハイブリッド車、リチウムイオン電池、高性能のソーラー発電技術など、現時点では、世界の競争場裏に投げ込まれても、比較的優位にある技術は、まだある。しかし、これらの技術も、欧米だけでなく、中国や韓国にも激しく追い込まれている。従って、これら比較的優位にある技術の競争力を高め、維持していくには、やはり政策が必要である。

企業や技術者を奮起させるには、より良い技術を開発した者には、ご褒美が与えられ、低いまま留まる技術にはペナルティを科す政策が不可欠だ。1970年代の激しかった産業公害時代に、政府も産業界のリーダーも、紆余曲折は経ながらも、大胆にアメとムチの政策を導入し、当時の厳しかった産業公害を乗り越えた。代表的な例が自動車排ガス規制であろう。当時の日本はまだ、世界の自動車業界から見て、ひ弱だと思われていたが、自動車排ガスを1/10以下にするという途方もない課題をアメリカから突き付けられて、それに企業も技術者も敢然と挑戦したために、それを乗り越えることができた。

今でも語り草だが、本田宗一郎さんは、「マスキー法は天の助けだ。今や世界中の自動車メーカーは、低公害エンジンの開発で同時スタートを切る。こんなチャンスはない。それはすなわち、世界で一番後発であったホンダが、この開発競争に勝てば、世界一のメーカーになることが出来る。」と語っている。しかし、今、温暖化、生物多様性の危機に直面しても、残念ながら、わが国の政治や産業界のリーダーたちは、敢然とこれに立ち向かう意志も戦略性も、そして忍耐力もないようだ。

一昨年の9月、当時の鳩山首相は、例の温室効果ガス25%削減を表明したときに、この目標を達成するためには、「政治の意志として、国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの固定買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現を目指していく」決意を語った。そして「国民も企業も政治も、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることが次の世代への責任である」旨、語っている。
それから、一年半、鳩山さんの舌の根も乾かぬうちに、民主党現政権は、排出量取引制度については、早くもギブアップ気味である。少なくとも来年度での導入は見送ってしまった。玄葉国家戦略相の補佐である柿沼正明議員は、「排出量取引というのは経済成長と環境が現時点では両立しない。もっと言えば、これをやったら今構築中の成長戦略が台無しになる。つまりアクセルとブレーキは同時に踏めない。」と語る始末だ(『週刊エネルギーと環境』2011年1月13日付)。

誠に、安直なギブアップ宣言だ。
こんなことを民主党のキーマンが言っているようでは、到底25%削減などは不可能だ。鳩山さんが掲げた目標は、本来ならば、日本が持っている環境技術、省エネ技術を伸ばし、国際競争力をつけるまたとない機会であるのに、それに挑戦もしないうちに、経済成長と環境が両立しないと平気でおっしゃる。日本の明日の希望の灯を自ら吹き消してしまうようなものだ。

これでは、日本経済の衰退は止まるまい。
by JAES21 | 2011-02-08 17:36 | 加藤三郎が斬る
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環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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