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「パリ協定」11月4日に発効
国際社会としての気候変動対策を導く「パリ協定」が11月4日に発効することとなった。早期発効を心から願っていた私にとっても想定外の早さだが、日本の国会は未だ審議すらしていない。TPPの批准を優先しようとした経済最優先・安倍政権の本件に対する真剣度の不足と国会対策の見通しの甘さが、はからずも露呈した格好だ。マスメディアなどは、早速に、日本の批准の遅れを批判しているが(例えば、10月10日付朝日新聞社説)、そのメディアそのものも、どれほど本気で「パリ協定」の意義や日本社会、特に産業界に与える甚大なインパクトと変革の可能性を報じてきたか、甚だ疑問だ。

早い話が、本年7月の参院選においても、与野党いずれも気候変動対策と「パリ協定」との関わりを主要争点にしたところは無かったし、私の知る限り、このことを真剣に取り上げ、論じたマスメディアはほとんどなかった。日本の政治家もメディアも、アベノミクス是非論議とごくわずかに原発再稼働に争点を当て、あるいは意識的に当てさせられて、その土俵の中で踊っていたようなものだ。

どうしてこうなったか。私は、安倍政権の中枢部に「気候変動対策は、日本経済、すなわちアベノミクスに悪影響を与えることはあっても、良いことは何もない」と思い込んでいる人が中枢部におり、影響力を奮っているのでは、と思わずにはいられない。安倍首相はG7の議長として、オバマさんやヨーロッパ首脳の力で「パリ協定」については前向きな首脳宣言を書き込まざるを得なかったが、先月の所信表明演説では、「パリ協定」については全く言及しなかった。

日本の国会で、批准が遅ければ、G7議長としての面子や信頼が損なわれているだけでなく「脱化石」に向けて一斉に走り出している欧米企業と日本企業との間の距離はますます開いていくだろうことも、私は心配している。


# by JAES21 | 2016-10-11 17:30 | 加藤三郎が斬る
年内発効が確実になった「パリ協定」

昨年末採択された「パリ協定」が当初の予定より早く、この11月には発効されることが確実になった。アメリカ、中国は既に批准、インド、そしてこれまで気候変動政策を先導してきたEUもこれらの国に後れをとっては、との使命感から、特例措置をとり、加盟国中準備の整った国から批准手続きに入るという。

一方日本は、先日の安倍総理の所信表明演説でも一言も触れられることなく、また、今国会での審議の準備さえ整っていない状況である。このままでは、COP22交渉にも参加できず、大きく後れを取ることになる。

政治だけではない。産業界の動きも海外に大きく後れを取る。グローバルネット9月号では、海外の様々な企業が、脱炭素化に向け既に戦略をとり始めていることが紹介されている。

先日海外企業の動きに詳しい方に、海外の先進的な企業を当会でのイベントで紹介してほしい旨依頼したところ、日本の企業(特に大企業)側から、環境団体等との会合に参加しないようにとの要請があるとの回答。グローバル化、情報化が叫ばれる昨今、企業サイドからこんな話が出てくること自体、既に世界から遅れを取っていることを示している。

しかし、全ての企業が後ろ向きなわけではない。
これこそビジネスチャンスととらえ、いち早く脱炭素社会に向けた取り組みを開始している中小企業もある。しかし、政府の対応があまりに遅いため、制度ができる迄持ちこたえられるか、との危機感が生じているのも事実である。

いずれにしても、世界の政治も企業も、脱炭素化に向けて大きく動き出している。永田町も経団連など経済界も、いい加減、「井の中の蛙」から飛び出して欲しいものである。日本のため、世界のため、そして子供たちのために。


# by JAES21 | 2016-10-04 17:30 | 藤村コノヱが斬る
灼熱化、気候異変に変えたら

今から27年前の1989年、私は環境庁の国際課長の職にあったが、その時から今日の地球温暖化や気候変動問題への取り組みを環境行政の課題として開始した。その前年には、国連(WMOとUNWP)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)という専門パネルを設置して、活動を開始していたからである。当時、世界の専門家は、英語では地球温暖化をGlobal warming と表現し、気候変動はClimate Change と書き表していた。当時はまだ、IPCCに集う専門家の間でも、本当に地球温暖化が発生しているのか、あるとしても、それが、人間の経済活動に起因しているのかについては、異論も多く確定していないかった。

しかし、気候変動に関する研究成果やデータが着実に積み上がってくるにつれて、今日、温暖化は疑いなく進行しており、その原因も人為活動によることが確実となり、昨年、190を超すすべての国によって合意されたパリ協定においては、原因物質であるCO2などの温室効果ガスの大幅削減を実施し、今世紀後半においては「実質ゼロ」とすることまで明記された。

このように厳しい目標を掲げ、削減をすべての国に迫るまでになった背景には、IPCCによる着実な科学的・専門的知見の集積もあったが、それに加え、近年の激しい気候異変が地球上のいたるところで発生し、多くの人が現実に様々な被害を被っている現実があろう。最近の気候変動対策に関する国連会議(COP)で、巨大な台風やハリケーンあるいは海面上昇などによる甚大な被害を現実に受けている国々の代表の悲痛な叫びにも似た訴えが、豊かさに慣れた国々の代表をも明日は我が身と大きく動かしている。

このように考えると、従来、使い慣わしてきた「地球温暖化」や「気候変動」という表現は今のままでよいのだろうかと思ってしまう。

「温暖」という日本語表現は、危険を表すよりはむしろ、ポジティブで緩やかさを表し、また「変動」も変化と同様、中立的(ニュートラル)なニュアンスを帯びており、その語自体では危機や脅威を示していない。しかし、温暖化も気候変動も今や社会にとって重大な危機、脅威、となりつつある以上、例えば、温暖化は灼熱化、気候変動は気候異変と表現し直したら、どうであろうか。ついでに言えば、温室効果ガスも灼熱化ガスはいかがであろうか。

# by JAES21 | 2016-09-27 17:30 | 加藤三郎が斬る
さらなる費用負担は原発をやめてから

先日の新聞に、「廃炉費 新電力も負担-政府調整 料金に上乗せ-」の記事が掲載された。原発の廃炉や福島事故の賠償を進めるために、大手電力会社だけでなく、電力自由化に際し新たに設立された、原発を保有していない電気事業者にも負担させようというものだ。当然、それは料金上乗せの形で私たち消費者の負担も増加することになる。

そもそも、「原発は安い!」と言われていたことが大きな嘘であることは、福島事故後周知の事実となった。そしてその後も事故に係る賠償や廃炉費用は見る見る膨らんでいる。現在の福島の状況を見る限り、今後も、増加の一途を辿ることは間違いない。

そうした中で、今回のこの案は、事故後作られた電気料金や税金でその負担を賄う仕組みを更に強化しようというもので、「原発反対」を訴えている多くの国民には、到底納得いくものではない。「普段は原発で利益を得ているのに、事故の時だけ国に負担(=税金)を、とは納得できない」という原子力委員会部会での消費者側委員の発言はもっともである。

しかしその一方で、私たちの多くが、事故前まで原発の危険性の認識が薄かったとはいえ、その使用を許してきたことは事実である。そう考えると、賠償は事故を起こした東電の責任だが、(通常の)廃炉費用に対しては、私たちにも一定の責任があるかもしれないという気がする。

ただし、仮にそうだとしてもそれは、再稼働はしない、早期に原発ゼロ社会を目指す、ということが確約されて初めて受け入れられることだ。

今のようななし崩し的でその場しのぎの議論ではなく、これからずっと続く莫大な廃炉費用を、誰が、どのような形で負担していくのか、国民も巻き込んだしっかりした議論が不可欠である。


# by JAES21 | 2016-09-20 17:30 | 藤村コノヱが斬る
気候変動の犠牲者

今年に限ったことではないが、近年、気候の不安定や異常と思われる気象現象がますます顕著になってきた。

この夏、日本を襲ったUターン台風(台風10号)の動きなど、その典型例であろう。これまで考えられなかったところで、台風が発生し、そして、西にふらついて行ったと思うとUターンをして、強力な台風となり、岩手県に上陸し、青森を突き抜けて、北海道を襲った。まさに、これまで、経験のないようなコースを辿る暴れ台風であった。

このような異常な気象現象は、もちろん日本だけでなく世界の各地で発生している。私は、毎朝、衛星放送で主要国のニュース番組を見ているが、アメリカのABC放送などは、ほとんど毎日のように、アメリカ国内で発生している異常気象(竜巻、山火事、大雨・洪水など)を伝えており、ABCはまるで気象専門チャンネルになったかのように錯覚するほどだ。

このようなことは無論アメリカだけでもなく、本年6月には、フランスやドイツで、大洪水が発生し、少なからぬ被害をもたらした。パリを流れるセーヌ川が増水し、川岸に近いルーブル美術館は、収蔵品を安全な場所に移す必要に迫られたほどである。ルーブルだけでなくパリの地下鉄も浸水し、鉄道サービスが一時的に休止するほどになった。同じころ、インドでは熱波が襲い、50℃を超える気温になったとも伝えられている。

当たり前だが、日本であれ、どこの国であれ、ひとたび異常気象に襲われると様々な被害が発生する。人命が失われたり、住宅やビルが損壊したり、道路や橋、鉄道が流されたり、そして、農作物が大被害を被ったり。人の生活基盤が根っこから奪われ、復旧のための費用も膨大になる。私たちの記憶にまだ新しいのは、昨年9月、鬼怒川の増水で、破堤した茨城県常総市の甚大な被害がある。一年が経過したが、被害の傷はまだ癒えていない。

台風にしろ、竜巻にしろ、大雨にしろ、昔からあった自然現象であるが、近年は、そのパワーや頻度などの程度が誠に問題だ。その背後にあるのは、海水温の上昇である。それをもたらしているのは地球温暖化であるのは疑いようもない。温暖化対策をしようとすれば、様々にコストが掛かるが、その対策コストよりも被害によるコストのほうが数倍大きくなるというのが、専門家の一致した意見である。しかし、様々な被害が発生していることと温暖化対策の必要性とはなかなか結びつかない。今も起こっている各地の洪水や浸水の被害者も自然現象によって運悪く被災したと思う人は多くとも、人間が長いこと怠ってきた温暖化対策の不十分さにより、人命や財産の損失が発生していると明確に認識している、つまり、端的に言えば、不十分な気候変動対策によって犠牲者になっているという認識はおそらく少ないであろう。このことが温暖化対策のパワーを弱めている一原因となっていると思うと残念でならない。


# by JAES21 | 2016-09-13 17:30 | 加藤三郎が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
by JAES21
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