環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

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ローマ法王の慧眼
ローマカトリック教会のフランシスコ法王が6月18日、全世界のカトリック信者に向けて、環境に関する回勅を出したというニュースをBBC放送や日本の新聞各紙で知った。
ローマ法王が環境に関し、どんな発言をしたのか大変気になったので、インターネットを通じて、回勅なるものの全文や、法王がツイッタ―を通じて発信した回勅の要約などを見て、ローマ法王の慧眼に大いに敬意を表するに至った。

このフランシスコ法王は今年の3月、バチカンを訪問した日本カトリック司教団と会談した際、東日本大震災で起きた福島第一原発事故などを旧約聖書のバベルの塔になぞらえ、人間の思い上がりが、文明の破壊を招くと警鐘をならしたとのこと。私はそれについての記事を見たときに、この法王はカトリックの宗教者というだけでなく、社会的な問題に対しても並々ならぬ関心のあるお方なのだと改めて知って、この記事を切り抜いて取っておいた。

それから3か月経って、地球環境の悪化と世界の貧しい人々の生活に絡めて法王が述べている長文の回勅に接して、素晴らしい知恵を持っている人だと今、改めて読み込んでいるところだ。

私は日本の典型的な仏教徒であり、ローマ法王などとは全く縁遠いと思っていたが、この回勅を読み進めるにつれて、彼の知恵に魅了されつつある。

法王は、1930年にアルゼンチンのブエノスアイレスで、鉄道員の子として生まれ、貧しい人たちの生活を間近に見てきた方だけあって、12億に及ぶカトリック信者の頂点に達した今も、その生い立ちや若い頃の生活を忘れずにいるようである。

彼の環境問題に対する知恵に満ちた言葉は沢山あるが、このブログでは一つだけ取り上げておこう。

それは「環境危機と社会的な危機という2つの危機があるわけではありません。それは一つの極めて複雑な環境・社会問題があるだけです。」と述べている点である。

彼はツイッタ―でも「環境と社会の悪化はこの星に住む最も弱い人たちに影響を与えます。私たちは地球の叫びと貧しい人々の叫びに耳を傾けねばなりません。」「貧しい人々とこの星のもろさの間には密接な関係があります。」と指摘している。

多くの環境専門家が、環境悪化の原因を大量生産・大量消費、そして、化石燃料の多量の使用などに絡めて述べるが、先進国、途上国を問わず、世界中で苦しんでいる多くの貧しい人について触れる人は少ない。また、貧困問題を論ずる人で、地球や環境問題の悪化に触れる人もまた少ない。ローマ法王は、これら二つの大問題は、決して別々の問題ではなく、共通の根を持つ、そして、その共通の根とは、科学技術に依拠した私たちの使い捨て文明にあるという。一方で、気候変動など地球環境の止まることのない悪化を生み、また一方で、豊かな者は益々富み、貧しい者は益々貧しくなるという今日のグローバル化した資本主義の下で、過酷な競争論理から出てくる結果について法王は触れているのだ。

ローマ法王の体験と叡智から生まれるこの指摘は、新鮮であると同時に重要な点であり、私自身も、この問題について突き詰めてみたいと思う今日この頃だ。
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by JAES21 | 2015-06-30 17:30 | 加藤三郎が斬る
将来を見据えた政治を

戦後70年ということで、様々な特集が組まれている。
先週末もNHKで冷戦時代の世界と日本の動きを、当時の映像や証言も交えて放映していたが、そこで印象に残ったが、大平正芳元首相が外相時代(田中内閣)に中国との国交正常化交渉に臨んだ時のこと。特に、様々な思惑が絡み交渉は難航したが、結果的にはなんとかまとまり、帰国の途に就いた時に、彼が、「今回はうまくいったが、30年後はどうなるか分からない」旨話していたという側近の証言が印象的だった。「あー、うー」という声を発することが特徴で、私たちの世代には印象の薄い首相だが、彼の当時の命がけの交渉や中国が力をつけた後の事も的確に予測していたというのは、さすが政治家、と感心した。

翌日の民放で、彼が首相の時代に、私的な「政策研究会」を設置していた(1979年1月)ことも知った。設置の趣旨は、彼は、「近代合理主義に基づく物質文明が飽和点に達し、近代化の時代から近代を超える時代に、経済中心の時代から文化重視の時代に至った」という時代認識を持っており、「わが国は、どのような方向を目指すべきなのか。そのなかで、国は、政治は、何をなすべきなのか、あるいは、何をなすべきではないのか。このような問題について、自主的な立場から、自由かつ活発に御議論いただき、御提言いただきたい。」ということだったそうだ。

先般、ローマ法王が公文書で「今世紀は並々ならぬ気候変動と空前の生態系破壊を目撃することになる」と警鐘を鳴らした。
しかし、今、この国の政治リーダーは、人智を働かせば避けることのできる戦争・軍事ばかりに関心を寄せ、人間の力では回避不能なところまで来ている気候変動の危機には全く無関心。自分に都合のいい意見にしか耳を貸さず異を唱える人を排除する姿勢、まさに、命を大切にしない姿勢を貫いている。

一国のリーダーとして、せめて、この国の30年後の姿とそれを見据えた政策を語ってほしいものである。
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by JAES21 | 2015-06-23 17:30 | 藤村コノヱが斬る
政治の時間軸をもっと延ばせないだろうか

政治や行政は、どこの国でもいつの時代でも様々な難問題を抱える。
比較的小さな問題もあれば、どう解決したらよいのか難しい、極めて深刻な問題もある。
そう言う問題に立ち向かい、一歩でも解決への道筋をつけるのが、政治、行政の役割であり、責任である。

最近の日本の動きを見ていると、確かに問題に取り組んではいるものの、政策の時間軸があまりにも短すぎるとの感を深くしている。

二つ例を挙げよう。

一つは、気候変動問題への対応だ。
これは、このブログや会報『環境と文明』でも常に触れているので、詳しくは述べないが、この巨大な問題に対し、日本の政治や行政の対応ぶりを見ていると、足元の問題にとらわれ過ぎているように思う。別の言い方をすれば、中長期的に問題を見ようとしていないとしか思えない。

「原子力発電所が止まっているから、とにかく再稼働すればいい。」
「一番安い燃料である石炭を何とか使えばいい。」
「再生可能エネルギーや省エネの技術開発の重要性は分かっても、費用はどうする。送電網の整備だけでも時間と費用が掛かる。」

と言った具合に、中長期的な課題に目を背け、足元で出来る対応で何とかしのごうとしている。足元の連続が中長期的な課題の解決にも繋がればよいのだが、石炭火力発電所の増設や、原子力発電所の再稼働などは、21世紀の課題解決には繋がらない。

現に、安倍総理が、今回のドイツサミットで公約した2030年に13年度比26%削減や、2050年80%以上削減といった中長期的な課題の解決には、なかなか繋がらないのが問題だ。

もう一つ。人口についても専門家の間では、20年以上前から限界集落の発生が伝えられ、繰り返し、日本の人口の減少や高齢化に警鐘が鳴らされてきた。しかし、この問題に本格的に取り組もうとしたのは、ここ2、3年だ。

消滅可能性自治体が具体的に名指しされ、慌ててこの問題に取り組もうとしている。最近に至っては、若者、特に女性の流出を何とかとか、経済団体が主導する婚活とか、さらには首都圏に住む高齢者をなんとか地方に移住させないと介護などの対応が出来そうにないという話が飛び交っている。

もし、日本の政治家や行政が、20年前から昨日、今日言われる対策に取り組んでいれば、事態は今日ほどの深刻さはなかったのではないか。

たった二つの例を取ってみても、日本の政治家や行政機関の時間軸が、せめてあと10年長ければ、問題への対応ぶりも相当変わっていただろうと思わざるを得ない。
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by JAES21 | 2015-06-16 17:30 | 加藤三郎が斬る
6月5日 環境の日にグリーン連合設立!!
6月5日グリーン連合が船出した。
当日は10時30分から衆議院第2議員会館第4会議室で設立総会が開かれ、設立趣旨、規約説明などを経て、設立が宣言された。遠くは九州からの参加もあり、65団体中(前日までの会員団体数)27団体の参加(1団体2-3名の参加有り)で、まずまずの穏やかな船出となった。

しかし、その後開催された設立記念シンポジウムは、事前申し込みをはるかに超える140名の参加があり、80名収容の衆議院第2議員会館第4会議室は大入り満員の状態となった。これほどまでに関心が高いとは想定していなかった事務局としては、うれしい誤算であった。(参加者の皆様にはご迷惑をかけてしまったが。)

シンポジウムでは、大久保規子大阪大学大学院教授が「『環境立国』への道~なぜグリーン連合が必要なのか~」と題して基調講演。ドイツの事例などを紹介しながら、連合の必要性について話して下さったが、特に印象的だったのは、欧州では環境NGOは経済団体、労働組合と並ぶ利益団体であり、政策形成に不可欠な柱として認知されている点である。

なぜなら、グリーン連合の目標は「経団連に対抗できる組織に」であり、大きな目的の一つは、後退甚だしい現在の環境政策を後押しし、より良い環境政策の実現に環境NPOも参加できる実質的な仕組みを作ることだからだ。

私自身、環境政策形成過程への環境NPOの参加の有効性について研究し、実際に環境教育等促進法の改正時にはそのことを明記する旨議員に働きかけ、その結果、改正法の第21条2項で(政策形成への民意の反映等)が明記された経緯もある。

しかし、実際に環境政策形成に環境NPOが実質的に関われているかと言えば、決してそうではない。特に現政権下では、審議会メンバーは政権寄りのメンバーばかりで結果ありきの議論しかしないし、パブリックコメントもどう反映されたかの説明は全くないというお粗末な状況である。もし環境NPOの実質的な参加ができていれば、2013年レベルから26%削減などという、姑息な温室効果ガス削減目標は出されなかったろうし、原発再稼働や石炭火力を重視したエネルギー政策は出てこなかったはずだ。

シンポジウム後半の議員との意見交換では、民主党の田島議員、福山議員、社民党の福島議員が、グリーン連合のカウンターパートを議員側にも作ろうという趣旨の発言をしてくれた。

議員と環境NPOが連携して、持続可能な社会に向けた環境政策をつくっていく、そんな日の実現に向けた、記念すべき熱い1日であった。

グリーン連合facebookページ
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by JAES21 | 2015-06-09 17:30 | 藤村コノヱが斬る
環境省の存在理由が問われかねない
あと数日もするとドイツ南部の小さな都市でメルケル首相の議長の下、先進国首脳会議(G7)が開催される。

この会議では、ウクライナ、ギリシャ、中国などの問題も当然議題になると思うが、COP21に向けて気候変動への対応もまた大きな議論になるはずである。

実際、その議論に備えて、日本でも、エネルギー特に電力の電源構成など議論されている。政府は、温室効果ガス削減について、2013年度比で2030年に26%削減するということに、本日6月2日、決定したようだ。

経済産業省などの説明によるとこれは欧州に遜色ない数字であるというが、EUは1990年比で2030年に少なくとも40%削減を明言している。日本の2013年比26%というのは、90年比で見るとわずか18%の削減に過ぎず、単なる数字のごまかしで、欧州と遜色ないと言っても国際社会で通用するとは思わない。

2013年を基準年にした愚は、既にこのブログでも論じたので繰り返さないが、少し関連する数字を見てみよう。

2013年比26%削減するということは、年間に換算すると今後毎年1.5%前後削減しなければならない。しかし、日本は長いこと削減どころか排出量を増やし続けているので、26%でも相当な覚悟が必要だ。しかも、温暖化対策は2030年が終点であるはずもなく、その先2040年も2050年もこの問題は続く。日本を含む先進国は、2050年までに少なくとも80%削減をコミットしている。

絶対値でみると90年の温室効果ガス排出量は、12億7千万トン、2013年では14億800万トンであったので、2030年までには10億4,200万トンまで下げ、2050年には、少なくとも2億5,400万トン程度にまで下げなければならない。このレベルまで下げるのには、今後37年ほどで現状からおおよそ11億5,400万トンほど削減しなければならない。

日本の過去の実績はどうかと言えば、1990年から2013年までの23年間で、削減どころか1億3,800万トンも増加している。今後2050年に向けて約11億5,400万トン下げていくには、大変な努力が必要であることがお分かりいただけるだろう。

今、環境行政は、産業界に対しては、自主的な行動に任せている。自主的な行動でこれだけ下げるのは不可能であることは専門家ならずとも明らかである。必要なのは規制であり、そしてまた炭素税や排出量取引を含む経済的手法であり、そのような政策を支える国民の意識改革である。
このいずれについても、今現在、表立った議論は全くない。環境省も中央環境審議会も規制や経済的な手法について具体的な議論があるとは聞いていない。「環境保全」が「経済成長」にがっぷり飲みこまれて、手も足も出ない状況と私には見える。こんなことをしていたら、2030年どころか2050年にかけても目標達成は不可能で、まさに環境省の存在理由が問われかねない事態になることは明らかだ。
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by JAES21 | 2015-06-02 17:30 | 加藤三郎が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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