環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

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原発再稼働問題への気になる視点
日本に50基ある原発を再稼働するかどうかは、原発事故発生以来、2年以上も大きな問題であったが、最近は、自由民主党圧勝を受けてかどうか、エネルギー関係者からかなり強気の意見が出ているのが気になる。

それは、アベノミクス最大の問題とされる「三本目の矢」の成長戦略をどう描くかということに関わっていて、それを進めるためにはどうしても原発を相当数再稼働させなければ、日本経済の成長戦略が描けないという思い込みが背景となっているのかも知れない。

私が気になった最近の意見を二つほど、紹介する。

一つは、7月25日付読売新聞「論点」欄での田中伸男氏の発言である。シェールガス革命の中で、日本が化石燃料を出来るだけ低価格で調達する戦略に関わる話から出てきた意見だが、「中国や韓国はいずれ地続きのロシアからパイプラインでガスを買うだろう。日本だけがLNGでの輸入一本に頼るのは危険だ。ロシア国営石油最大手のロスネフチと、パイプラインでのガス輸入を交渉してみたらどうか。足元を見られないためには早急に原発も再稼働すべきだ。」この文章から読み取れるのは、日本が出来るだけ有利な価格でガスを輸入するための材料として、まさに「足元を見られないため」に原発の早急な再稼働を主張していると読み取れる。

もう一つ、その2日後の産経新聞の「政策を問う」欄でのインタビュー記事であるが、政策研究大学院大学客員教授の石川和男氏が、いくつも気になる意見を述べている中で、「LNGの輸入が増え、本来は国内で環流すべき3兆~4兆円が毎年、追加燃料費として海外に流れ出している。これは消費税率を5%から8%に引き上げた税収増の半分程度に相当する大変な額だ。原発を動かさなければ消費税増税なんて焼け石に水になる」
また、「福島第一原発事故の教訓を生かすなら、冷却装置の多重化を図れば事足りる。新規制基準は航空機の衝突や火山の噴火などさまざまな要素を上乗せしており、完全に適合しなければ稼働させないなんていうのはナンセンスだ」さらに「本来なら今でも電力会社が自分の判断で再稼働できるのに、ルールが不明確なまま、『空気感』で稼働させないのは、法治国家としておかしい。」と主張されている。

福島第一原発事故で突然人生を変えられ、今なお、避難を余儀なくされて筆舌には尽くしがたいほど苦しんでいる十数万人たちは、このような議論をどう見るのであろうか。

損害賠償の額もまだ決着していないし、そもそも除染だけでも産総研の試算で5兆円以上が掛かると試算されているときに原発の再稼働を、紹介したようなエネルギー関係者のロジックで推し進めていいのだろうか。

このようなことを指摘すると情緒的な反応だとか、日本経済の将来を考えていない無責任な意見とか、エネルギー関係者に非難されるが、私はそうは思わない。

なぜなら今回の原発事故の原因もまだ十分には解明されていない。地下から出てくる高濃度の放射性排水の処理すらままならないでいる。核燃料サイクルの今後についても不透明なままである。そして何より、再稼働しようがしまいが逃げられない放射性廃棄物の処理処分の方法や場所も未だに不透明な状況である。これは感情論ではない。

このように八方塞がりの状況で再稼働を議論するには極めて慎重で、そして何よりも今回の事故によって様々な被害を受けた被災者の気持ちを十分にくみ取ったものでなければならないと考える。

さらに言えば、省エネと再生可能エネルギーを徹底追及することにより、温暖化対策にもなる新たな技術開発やビジネスが生まれると確信しているからである。
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by JAES21 | 2013-07-30 17:14 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
教育を経済の僕(しもべ)にしないように!

参院選も大方の予想通り自民党の圧勝で終わった。3.11という未曾有の悲劇を経験して「日本は大きく変わるかもしれない」という期待がまた裏切られる結果となった。
これで、脱原発は遠のき、温暖化対策の停滞も続くことになるだろう。

そんな中で、選挙戦でも大きな論点にならなかったが、教育の更なる劣化も極めて心配である。選挙前、自民党は教育政策の公約として、「世界で勝てる人材の育成」を掲げた。まさに企業戦士、それもグローバルに戦える一部企業戦士の育成であり、「英会話やIT能力に優れ、海外でも技術革新を生み出せる」人材を想定しているという。

確かにITも英語も使いこなせれば、それに越したことはないだろう。
しかし、ITにどんなに長けていても、ITのメリット・デメリットを理解した上で、的確な情報を取捨選択する力、それを自らの考察と結びつけて活用する力がなければ、単なる道具でしかないし、犯罪の道具にもなりかねない。

また、どんなに流暢な英語がしゃべれても、語るべき内容がなければ、到底人を感動させたり説得することはできず、世界で戦う力にはなり得ない。

教育の目的は、世界と戦う人間の育成ではないし、まして企業戦士を育成することでもない。
人間として悩み苦しみながらも自己の生き方を模索し確立することのできる力を育てることであり、社会そして世界の持続性に貢献できる力を培うことである。

例え、政治が経済の僕に成り下がったとしても、教育はそれに与してはならないと思う。そうでなければ、日本はますます薄っぺらな国になってしまいそうな気がする。

そんなことにならないよう、私たち市民は、あきらめずに、自らなすべきことをした上で、政治への監視をますます強めなければならないと思う。
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by JAES21 | 2013-07-23 09:46 | 藤村コノヱが斬る | Trackback | Comments(0)
「自由演技」20年
「自由演技」20年

今からちょうど20年前、私は環境庁での官僚生活をやめ、現在のNGO/NPO生活を始めた。53歳のときである。

官僚からNGOに転身した理由はいくつもあるが、理由の一つは、地球環境部長時代に、温暖化条約交渉会議に出席していた3年間、Greenpeace、WWF、FoEなどの欧米系の主要なNGOなどが極めて大きな役割を果たしているのに、日本にはそれに匹敵するような団体がないということで、それなら自ら立ち上げたいと思ったこと、2つめは、温暖化などの地球環境問題は、それ以前に私が格闘していた公害問題とは次元を異にする問題であり、私どもが依拠している文明そのものに欠点があると考え、そのような問題を扱うには、役人で居続けるのは制約になると考えたからである。

当時、官僚からNGOに転身する人はほとんどいなかったので、新聞各紙や雑誌などが、私の転身振りに興味を持って、「人」の紹介欄やインタビュー記事などいろいろ載せてくれた。確か東京新聞でのインタビューの時に、「27年余の役人生活は言わば『規定演技』であったが、これからは、環境の悪化と大量生産・大量消費の20世紀型文明との関係について自由に発言し、行動する『自由演技』をしてみたい」という主旨の話をした。この時使った「自由演技」という言葉は、その後もずっと私の心の支えの役目を果たしてくれている。

例えば、経団連首脳などの温暖化対策の戦略性のなさを批判したり、憲法を改正し、憲法の中に環境原則の導入すべきなどの発言は、役人生活をしていたらとても出来ないことなので、自由演技をしていきたいという目標は、それなりに達成されたと考えている。

しかし、自由に演技をしてみたものの、それがどれほど世間に受け入れられたかは別問題である。もしかしたら、独りよがりの自己満足に終わっているかもしれないし、逆に、産官学でがっちり固められていた日本社会に風穴を開ける力になったと社会からそれなりに評価されているかもしれない。

私自身、これまでの20年がどう評価されているのか今もって分からないし、正直言ってさほど気にもしていない。ただ、自戒しているのは、独りよがりにならないようにということである。細心の注意を払いながら、その上でこれまで通り、持続可能な環境文明社会を築くために自由に発言し行動していきたいと願っているところである。
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by JAES21 | 2013-07-16 13:48 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
参議院の存在意義を考えて、選ぼう
参院選が近づいてきた。
各党の主張や政策を聞いていると、改めて、衆議院と参議院の役割の違いとは、一体に何なのかと考えてしまう。

学生時代、たしか、参議院は「良識の府」であり、衆議院の行きすぎをチェックし、バランスをとることがその役割と学んだ記憶がある。にもかかわらず、今の参議院は、衆議院同様、党利党略ばかりが目立ち、立候補者自身がどのような専門性や考え方を持っているのかよくわからない。

『教科書・日本国憲法(一橋出版)』【資料5】参議院の役割には、次のように書かれている。「戦後GHQ草案では一院制を規定していたが、日本政府の強い要請により二院制を採用。その理由として、政府は、「刹那的な国民の気持ち」を衆議院に、「継続的な国民の気持ち」を参議院に代表させたいと答えた。つまり、参議院は衆議院とは異なった選挙方法をとることによって、衆議院とは異質な代表を選出し、別の観点から国会の審議を行えるのではないかということ。全国区を設け、任期を6年としたのも、より幅広い国民全体の利益に立って、時の政治的判断にまどわされず、じっくり腰をすえた議論ができるよう配慮したため」と。

実際、第一回参議院選挙の折(1947年)、山本有三や田中耕太郎など無所属の作家や学者が多数当選し、政党の枠を超えた会派「緑風会」を結成。文化財保護法の制定に尽力するなど、「良識の府」として大きな貢献をしたという。
しかし、その後の急速な政党化により、緑風会も解散し、参院も政党の意向に左右される現在の姿になってしまった。

上述した国会創設の精神に従えば、今回の「ねじれをなくし、政治の安定を」などという与党のスローガン自体、おかしなことである。そして、“より幅広い国民全体の利益に立って、時の政治的判断にまどわされず、じっくり腰をすえた議論”が必要な「気候変動(地球温暖化)問題」について語る候補者は、この猛暑にもかかわらず、ほとんど見かけない。

金太郎あめのような言葉ではなく、自分の言葉でしっかりとした考え方や信念を語る候補者。
党利党略ではなく、自らの人生経験や専門性を活かし、党派を超えて「国民の為」「将来世代の為」に働いてくれそうな候補者を、目を凝らし、耳を澄ませて選ぼうと思う。
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by JAES21 | 2013-07-09 13:51 | 藤村コノヱが斬る | Trackback | Comments(0)
新ラッダイト運動が必要か
ラッダイト運動について、ご記憶だろうか。
高校時代の歴史の教科書に書いてあったような気がする方も多かろう。

それは今からほぼ200年ほど前、産業革命初期のイギリス・ノッティンガムなどの織物工業地帯で、織物工たちが職を奪うこととなる工業用機械の打ちこわしを行った運動で、これは5年から6年続いたという。
しかし、機械を壊したからと言って、問題解決にならないことを悟った人たちはやがて、労働組合などを結成し、制度的に問題を解決する方向に進む契機となったという。

最近、私が気になっているのは、失業、特に若者の失業の深刻さである。その原因の一つが、やはりPC、スマホやロボットなどの最新機器の開発と投入にあることは明らかだろう。

かつては、電車に乗るにも窓口で切符を買い、改札口で駅員がパチンパチンと印をつけていたのが、今は、すべてが電子化、自動化している。この分野こそ相変わらず人手が必要であろうと思われている農業、林業、介護などの場でも、IT技術やロボットなどが容赦なく入り込んでいる。

6月29日付の毎日新聞は「3Dプリンターがモノづくりを変える」と題して、3Dスキャナーで取り込んだり、CADで作成したデータがあれば複雑な形状でも数時間から数日で完成させる技術が浸透しつつあるという。この技術を使えば、時間もコストもずっと減り、熟練工の高度な加工技術が不要になりかねないとのこと。

ラッダイト運動の時もそうだったが、IT技術やロボット技術を破壊しただけでは全く物事は解決しないのは明白だ。しかし、資本の論理、効率性の論理で、このような新技術を無差別、無制限に仕事場に持ち込めば、人はどんどんいらなくなり、貴重な技術を持つ熟練者も含め、失業者の群れをつくることになりかねない。

いわば、新ラッダイト運動を始め、次から次へと開発される新技術と雇用との実態を見つめ、人間が人間らしく活動できる知恵を今から意識的に育て、そして制度化していく必要があるだろう。
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by JAES21 | 2013-07-02 14:28 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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