環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

<   2008年 08月 ( 1 )   > この月の画像一覧
不作為のツケは誰が払うのか?
 これまでの温暖化対策を巡る国内での議論を見ていると、温暖化の科学や原因論、京都議定書は欠陥条約、基準年は不公平、EUの排出量取引は効果なし、自主行動計画で十分などの諸点に力を入れすぎ、あまりにも時間を浪費しすぎた感が深い。
 京都議定書により日本は今年度から5年間、温室効果ガスの排出を現状レベルから12~13%削減した状態に維持する必要がある。問題はこの費用がどのくらいになるかだ。
 仮に超過分の排出枠を外国から買い取ってオフセットしようとすると、CO2の値段がまず問題となる。CO2トンあたりの取引価格は、EU市場で現在29ユーロ(4700円)前後であるが、価格は上昇気味。ということは、1%の超過分(1260万トン)の価格は、現時点で約600億円程度に相当する。従って、例えば10%超過すれば、その年間の潜在費用は、概ね6000億円前後となる。

 もちろん、この金額全てが取引によって、外国に流出するわけではない。超過分のうち、日本の森林管理がしっかり行き届いていれば、上限値で3.8%分は森林の吸収分とすることが出来る。家庭やオフィスで省エネが今よりも大幅に進めば、削減も期待できる。また、鉄鋼・電力などの民間企業はすでに数年前から海外の排出枠をCDMなどの手法を使って、購入しつつあるので、先の年間6000億円の全額を税金で持つわけではない。
 しかし、森林吸収分3.8%は、1990年以来きちんと管理している森林についてのみカウントされるので、森林荒廃の現況を考えると3.8%は無理で、せいぜい半分位ではと見ている専門家は少なくない。今のままの制度下で、家庭やオフィスの大幅省エネ実現を期待するのは、無理がある(それが可能なら、これまでに実現している)。

 こう見ると、今後5年間に亘って、民間CDM分を含め毎年数千億円程度の費用を、中国、ハンガリー、ロシア、ポーランドなどから買ってくる事態に追い込まれる。今、高齢者に対する医療費など社会保障費を2200億円程度、圧縮しようとして政府・与党は四苦八苦しているのに、毎年、数千億円規模の金が海外にただ出てゆくのは何ともやり切れない。
 この膨大な日本の資金の海外流出(出血)の恐れを前にすると、電力、鉄鋼などの有力業界が経団連のなかでの強力な抵抗勢力となって日本の排出削減に必要な排出権取引や環境税の導入、再生可能エネルギーの利用促進に消極的であったが、それは一体何のために、誰のために強く反対してきたのであろうか。資源、燃料高騰とともに、排出枠買い取り経費が、自分の業界だけでなく、最終的には国民に膨大なツケが回ることを承知で反対していたのだろうか。
 もっと早くから必要な制度を導入し、積極的に対策を取って、議定書からの超過分を少しでも減らしていれば、不必要なお金を外国に払わなくて済むだけでなく、国内の環境産業や技術の活性化に回るのにと残念でならない。

 業界と経産省とが強い抵抗勢力となって対策を遅らせたことへのツケとして、国民や企業に跳ね返ってくる膨大な費用負担に加え、異常気象による被害が拡大し、たくさんの方が苦しむコストも近未来には発生するであろう。当面の京都議定書を達成するための排出枠購入費用だけでも、本来であれば、国内の技術開発や環境ビジネスの拡大、森林の管理さらには福祉や教育などに回すべき費用なのだ。
 このことの政治的責任が厳しく問われる日も遠からず来るだろう。

加藤三郎、藤村コノヱ

e0145924_15584870.jpg

[PR]
by JAES21 | 2008-08-21 15:54 | 共同代表が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
by JAES21
カテゴリ
全体
会報巻頭言『風』
加藤三郎が斬る
藤村コノヱが斬る
共同代表が斬る
はじめにお読み下さい
未分類
以前の記事
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 05月
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧