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カテゴリ:会報巻頭言『風』( 4 )
会報『環境と文明』8月号風公開しました。

会報『環境と文明』8月号巻頭言『風』を公開しました。

『環境と人類社会の危機に向き合うローマ法王』 加藤三郎

毎月発行している会報『環境と文明』は、その月毎のテーマを決め、専門家の目、市民の目、それぞれの視点から様々な角度で、環境問題を見つめていきます。

見本誌をご希望の方は、事務局info@kanbun.orgまでお問いあわせ下さい。
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by JAES21 | 2015-09-04 13:48 | 会報巻頭言『風』
2011年10月号巻頭言『風』
これでいいのか、リニア中央新幹線

加藤三郎

多くの国民が、3.11後の震災・津波被害の激甚さや東電福島第一原発からの放射線汚染の深刻さに関するメディア報道に気を取られていた最中に、国民の将来の公共交通手段にとって極めて大きな影響を与えることになるであろう一大プロジェクトが静かに動き出していた。それは、国土交通大臣が、交通政策審議会の答申を受けて、本年5月27日、JR東海に対し、リニア中央新幹線の建設指示を行ったことである。

整備計画の概要は、超電導磁気浮上方式を採用し、最高時速505km、南アルプスの下をくぐり抜け、東京・甲府・飯田・名古屋・奈良・大阪などを結ぶという。工事は2014年度に着工し、名古屋までは2027年に、大阪までは2045年に開通する計画。この建設費用9兆円余は、途中の駅舎建築費を除いて全額をJR東海が負担するとのこと。

東京・名古屋間は40分、大阪へは67分で結ぶ超高速で、メディアは、いよいよリニア時代の開幕と歓迎の論調が目立ったが、鉄道ファンである私にとっては、とても喜べない深刻な疑問がある。

その第一は、何故そんなに速く走らねばならないのか、である。もちろん、人間の本性として、出来るだけ早く目的地に着きたい、世界最速のスピードを享受したい、というのは自然であろう。日本の鉄道はたゆまぬ技術の進歩を重ね、1964年に開通した東海道新幹線は、東京・大阪間を、こだま5時間、ひかり4時間で結び、その後順次所要時間を短縮して、今やのぞみ号を利用すれば2時間30分前後で、大阪に辿りつける。それをさらに速くして、航空機や自動車と優位に競争したいと鉄道事業者が考えるのも無理からぬことかもしれない。しかし、それは、科学技術の進歩を無制限に追求した20世紀型の思考法であり、やり方ではなかろうか。物には限度がある。名古屋までの40分間、コーヒーをゆったり味わう間もない内に着いてしまう。そこから大阪までの27分、弁当を食べる時間もない。そんなに速く着く必要のある人はどれほどいるのかという疑問は消えない。

第二は、東京・大阪間の利用者の数を過大に(敢えて言えば水増しして)、見込んでいるのではないかとの疑問だ。2005年時点で、東京・大阪間の利用者は年間442億人キロであったものが、本計画では、リニア新幹線だけで、408億人キロ、それに、在来型の東海道新幹線もあるので、ここに254億人キロ程度加算される。つまり、約660億人キロの需要を見込み、現在よりも、1.5倍の人が行き来することになる。

しかしながら、日本は、人口減少局面に入っている。人口専門機関の中位予測によれば、2030年には、日本の総人口は現状よりも約1,300万人減り、2050年には、なんと3,800万人ほど減る見込みだという。しかも、高齢化率は、現在の23%が、2030年には32%、50年には、約40%にならんとしている。つまり、人口総数が大幅に減り、高齢化が進み、しかも、インターネットの通信手段も進化し、ITを利用した会議などが一般化しているであろう中、何故これほどの交通需要を見込めるのだろうか。

JR東海によれば、開通時の運賃は、現行運賃よりわずか1,000円程度の上昇で済むということだが、その秘密の一つは、乗客数の過大見積りではなかろうか。

第三の疑問は、このようなリニア新幹線が、開通した場合、在来型東海道新幹線のサービスレベルはどうなるのか、だ。JR東海としては、リニア新幹線を大幹線として乗客をかき集めることになるだろうから、どうしても、在来の新幹線はローカル化し、運行本数や間隔などのサービスは低下せざるを得なくなるのではなかろうか。この沿線には、静岡、浜松、岐阜、大津、京都などの中核大都市がいくつも存在している。リニア路線からはずれる京都を含むこれら都市へのサービスがどうなるのか。

第四に、リニア新幹線の運行には従来型の新幹線に比べ、ラッシュ時には約3倍の電力を必要というが、開通する頃には、原子力発電の比率が低下(ないしはゼロ)しているであろうなかで、安定した運行が可能かどうかも気になる。JR東海の葛西会長が、5月24日付産経新聞紙上で「腹を据えてこれまで通り、原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない。(中略)今やこの一点に国の存亡がかかっている」と力説しておられるのは、リニアのことが頭にあるのかなと私はつい思ってしまう。

この他にも南アルプスの下をくり抜いて走るリニアについては、自然環境への影響、あるいは、強力な磁気の人体への影響、大深度のトンネル走行中の車両火事など、心配ごとは沢山ある。

以上のような個々の疑問だけでなく、そもそもリニア中央新幹線の事業内容については、私の周辺でもほとんどの人が知らない。事実上、限られた審議会での専門的な議論によって計画が作られ、事業化され、否応なしに、それは将来の日本の動脈にも大きな影響を与える。原発問題が「原子力ムラ」と言われる限られた人々の間で計画され、実施されたが、結局、今回の原発事故のような、とてつもない被害を多くの人に与え続ける例もある。将来、仮にリニア新幹線の経営が行き詰ってしまえば、国民へいろいろな形で負担が発生することは避けられない。英・仏が運行した超音速コンコルドの破綻の例もある。それを避けるには、全てをオープンにし、多くの人がこの問題について、多方面から検討し、納得のゆく事業(廃止も含め)になるようにしていくべきだと強く感じている。
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by JAES21 | 2011-10-25 16:30 | 会報巻頭言『風』
2011年09月号巻頭言『風』
前進ために情報を活かす

藤村 コノヱ


 8月6日放映のNHKスペシャル「原爆投下~活かされなかった極秘情報」をご覧になった方も多いと思います。これまで想定外の奇襲とされていた66年前の原爆。実は日本軍の諜報部隊は、米軍の不審なコールサインを事前に傍受し、そのことを軍上層部に伝えていたにもかかわらず、その情報は握りつぶされ、そして広島、長崎での大きな悲劇を招くことになってしまった、というもので、当時の諜報部員の証言とその後の資料により明らかになった事実です。この事実そのものに驚かされたのは当然ですが、それにもまして、この情報隠ぺいが今回の原発事故と重なり、66年を経た、情報化時代と言われる今も、当時とさほど変わらない国や官僚、政治家の体質・実態にがく然とする思いです。

 当時の日本軍上層部がどのような判断で、この「国民の生命」に関わる重要情報を握りつぶしたのかは明らかではありません。しかし、負け戦の最終場面で、軍の中枢部に「国民の命が第一」という思いは殆どなかったと思われます。一方今回の原発事故ではどうでしょうか?電源喪失の時点から、以前から原発に警鐘を鳴らしていた科学者、学識者、NGOの間では、重大な事故になるとの情報は流れていました。そしてその情報は政府にも届いていたはずです。しかし、政府が重視したのは、東電本社や経産省、そして原発推進御用学者からの情報であり、結果的に「国民の命」に関わる重大情報を軽視していたのではないでしょうか。こうした時の国の常套の言い訳は、「国民がパニックに陥るから」と言うものです。確かにそうした懸念が皆無とは思いません。しかし、震災後の多くの日本人の冷静な行動を見る限り、的確な情報を迅速に公開した方がメリットは大きかったと思われる面は多々ありますし、何より政治家はじめ責任ある人たちが国民の生命を第一に考えていれば、もう少し違った対応ができ、被害を今よりは抑えることができたのではないかと悔やまれます。

 こうした政府、政治家、そして大組織の無責任体質に加え、マスメディアの情報もまちまちで、ツイッターやブログへの書き込みも大量にあり、本当に何が正しい情報なのか、誰の言う事を信じればいいのか、まさに情報化時代のリスク、負の側面を体験する事態が今も続いています。

 そうした中で、私たちがしなければならないことは、大きく2つあると思います。

一つには、迅速かつ適切な情報公開を強く求めることです。情報公開は民主主義に不可欠のものとして、スウェーデンでは1766年に情報公開法が制定され、アメリカでは1966年に国民の知る権利を背景に情報公開法が制定されています。日本でも、それを求める動きは1970年頃からありましたが、施行されたのは2001年4月。しかも、国民の知る権利は目的に明記されていないなど、不十分な点も多いようです。また除外される情報として、個人情報、法人情報、国の安全・外交に関する情報、公安情報、意思形成過程情報、行政執行情報等が挙げられています。今回の原発情報は「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」ということになるのでしょうが、国や政府、大企業の無責任体質が蔓延る中で、民主主義国家として除外される範囲がこれで適切なのか、大いに疑問を感じてしまいます。(ちなみに、今回の会報で大久保先生に書いて頂いたオーフス条約は、環境に関連した情報へのアクセス権、意思決定への市民参加の権利、司法へのアクセス権を保障する条約ですが、日本はまだ批准さえしていません。)

 もう一つは、政府やメディアを頼みにし期待するよりもむしろ、情報を受け取り選択する私たち自身が、賢く情報を選択し判断し使いこなす力をつけることの方がもっと重要だということです。情報はあくまで状況に対する知識をもたらしたり適切な判断を助けたりするものです。しかも、これからの時代、原発に限らず、遺伝子組み換え、ips細胞、多様化する化学物質の大量使用などなど、自然の理から外れた先端技術が及ぼす人や自然界への影響(「未知の領域」)については、例え情報があっても、それをどう判断し、個人として、社会としてどう行動するか、まさに人間の知恵が試されるからです。

 そうした知恵を育むため、文部科学省でも、情報教育を20年以上も行っています。しかし、現状を見る限り、情報を処理し使用するノウハウは育ったものの、自らの経験と結び付けて情報を選択し、知恵として活用する能力の育成にはあまり役立っていないように思われます。また2000年より導入された「総合的学習の時間」は、こうした未知の領域にも対応できる「生きる力」の育成を目的とし、「情報教育」も一つの柱でしたが、結果として、影の薄いものになりつつあります。
 一方情報産業に関わる産業界も、ハード技術の開発や市場の拡大には熱心ですが、教育や倫理といった面は「使う側の問題である」としてあまり熱心ではありません。

 ここ十数年のIT技術は目覚ましい進展を遂げています。
 また、会報7月号で、環境教育推進法が改正されたことで、情報公開を積極的に進めることや、市民・NPOの意見を政策に反映させる仕組みづくりが進むだろうことを述べました。そして、原発問題についても、この法律が使えるのではないかと述べましたが、今回、原子力安全・保安院や原子力委員会などの組織が経産省から環境省に移管されることにより、その可能性はより高まったのではないかと思います。さらにオーフス条約批准に向けた動きもあります。

 こうした情報開示を求め使う場面は少しずつ整備されつつあるわけですから、これから先は、情報を「知恵」として使いこなせるようになることが大切です。おそらく、こうした知恵は、一朝一夕でつくものではなく、学校・生活・仕事のあらゆる場面で一生涯を通じて自ら身につけていくしかないのかもしれません。それでも、信じるに足る有識者の知見(情報)と科学情報を参考にしつつ、自らの知識や経験、ヒトとしての感性(直感)、想像力、倫理観等を総動員して、選択し、判断し(私の場合は、自然の理に沿っているか、将来世代にツケを残さないかが基準です)、知恵に変えて行動していくことを日々の生活の中で積み重ねていくこと、そうした姿を子や孫に伝えていくことを、私たち自らが、意識的にやっていく必要があるのではないでしょうか。

 民主主義では、「自由」と「責任」、「権利」と「義務」が求められます。そして環境文明社会の構築に向けては、お任せ民主主義から、真の民主主義の深化を図っていくことが重要です。そのためには、情報を発信したり受けとる「自由」「権利」と併せて、選択し判断する「責任」や「義務」を引き受ける、市民としての覚悟が求められているのだと思います。
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by JAES21 | 2011-09-25 16:34 | 会報巻頭言『風』
2011年08月号巻頭言『風』
「脱原発」論:3プラス1

加藤 三郎


 東電の原子力発電所の事故から5カ月となる。この間、原発問題についての意見は様々に飛び交っている。私自身、沢山の議論を見聞きしてきたが、本欄では特に印象の深い三人のご意見の紹介と改めて私自身の意見を表明しておきたい。
 その三人とは、作家であり、ノーベル文学賞の掛け声も高い村上春樹さん、二人目は、城南信用金庫理事長の吉原毅さん、三人目は、人類学者の中沢新一さんである。
 三人の主張の根拠はそれぞれ違っているが、脱原発を目指すという点では変わりがない。

 村上春樹さん(作家)

 村上さんは今年の6月9日、スペインのカタルーニャ国際賞受賞式で、「非現実的な夢想家として」と題してスピーチし、原子力に関する彼の考え方を表明した。毎日新聞は6月14日から16日まで3回に分けて、スピーチ全文を掲載している。その長いスピーチのうち、原子力発電問題に関わる部分について、少し詳しく紹介しよう。
 今回の福島での事態は「我々の倫理や規範に深く関わる問題である」と村上さんは言う。彼は、広島と長崎に、原子爆弾が投下され、多くの人が亡くなり、生き残った方も多くが放射線被ばくの症状に苦しんだことを想起する。原爆投下から66年が経過する今、福島第一発電所が放射線をまき散らし、周辺の土壌、海や空気を汚染し続けていることについて、彼は「何故そんなことになったのか?戦後長いあいだ我々が抱き続けてきた核に対する拒否感は、いったいどこに消えてしまったのでしょう?」と自問し、その答えは「効率」だと考え、次のように続ける。「原子炉は効率が良い発電システムであると、電力会社は主張します。つまり利益が上がるシステムであるわけです。また日本政府は、とくにオイルショック以降、原油供給の安定性に疑問を持ち、原子力発電を国策として推し進めるようになりました。電力会社は膨大な金を宣伝費としてばらまき、メディアを買収し、原子力発電はどこまでも安全だという幻想を国民に植え付けてきました。(中略)国民がよく知らないうちに、地震の多い狭い島国の日本が、世界で3番目に原発の多い国になっていたのです。」
 「原発に疑問を呈する人々には、『非現実的な夢想家』というレッテルが貼られていきます。」「原子力発電を推進する人々の主張した『現実を見なさい』という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な『便宜』に過ぎなかった。それを彼らは『現実』という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。
 それは日本が長年にわたって誇ってきた『技術力』神話の崩壊であると同時に、そのような『すり替え』を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。」
 原爆の悲惨さを知っている我々日本人は、核に対し「ノー」を叫び続けるべきだったと、村上さんは言う。「我々は技術力を結集し、持てる叡智を結集し、社会資本を注ぎ込み、原子力発電に代わる有効なエネルギー開発を国家レベルで追求すべきだったのです。たとえ世界中が『原子力ほど効率の良いエネルギーはない。それを使わない日本人は馬鹿だ』とあざ笑ったとしても、我々は原爆体験によって植え付けられた、核に対するアレルギーを、妥協することなく持ち続けるべきだった。核を使わないエネルギーの開発を、日本の戦後の歩みの、中心命題に据えるべきだったのです。」

 吉原 毅さん(城南信用金庫)

 城南信用金庫と言えば、日本に数ある信用金庫の中でも、預金、貸出ともに全国2位という信用金庫である。その城南信用金庫は、4月8日、「原発に頼らない安心できる社会へ」と題した次のような“宣言文”を発表した。
 「東京電力福島第一原子力発電所の事故は、我が国の未来に重大な影響を与えています。今回の事故を通じて、原子力エネルギーは、私達に明るい未来を与えてくれるものではなく、一歩間違えば取り返しのつかない危険性を持っていること、さらに、残念ながらそれを管理する政府機関も企業体も、万全の体制をとっていなかったことが明確になりつつあります。
 こうした中で、私達は、原子力エネルギーに依存することはあまりにも危険性が大き過ぎるということを学びました。私たちが地域金融機関として、今できることはささやかではありますが、省電力と省エネルギーのための様々な取組みに努めるとともに、金融を通じて地域の皆様の省電力、省エネルギー、そして代替エネルギーの開発利用に少しでも貢献することではないかと考えます。」
 朝日新聞は6月29日付で、吉原理事長へのインタビュー記事を載せている。「正直いって私自身、不安に思っていませんでした。反原発運動に対しても、なぜそこまで反対するのだろう、と思っていました。いま、申し訳ない気がしています。ちゃんと考えなければいけませんでした。」と3.11以前に彼が抱いていた原発に対する見方への反省を率直に述べ、3.11以降、彼の考えが変ったことを次のように述べている。「今回の原発事故は人間の思い上がりを象徴するものです。このような技術文明は近代合理主義の行き着いた果ての姿かもしれません。経済発展は、無理のない着実な程度がよいのです。それなのに大局観もなく突き進み、成長のために原発はやめられないと思いこんだところが問題でした。」
 さらに吉原さんは「今回のような事故を2度と起こしてはならないと考えるならば、すべての原発はいったん運転を止めるべきです。一斉点検し、老朽化したものは廃炉にする。できるだけすみやかに、です。」とも述べている。このインタビューの最後に記者から、あなたは経済界の異端児ですね、と言われたのに対し、「とんでもない。私は常識人ですよ。ご近所のみなさんや中小企業の経営者の方々が思っているような、ごく当たり前のことを言っているだけです。」と答えている。

 中沢新一さん(人類学者)

 中沢さんは雑誌『すばる』の6・7・8(8月号補遺)月号に「日本の大転換」と題する論文を発表した。字数にすれば5万字を超す大論文で原発問題以外にも一神教論あり、資本主義論ありで刺激的でユニークな論考である。但し、彼独特の用語もあり、私には必ずしも読みやすい論文ではなかったが、彼の原子力問題に対する意見は、明瞭である。その部分を私なりに要約すると次のようになる。
 原子力発電という技術体系は、致命的な欠陥を抱えている。地球の生態圏の内部に、太陽圏に属する高エネルギー現象(太陽内部の核融合により大量に発生する熱エネルギー)を無媒介的に持ち込むその技術は、今の人類の知識段階では、安全に運用することが、きわめて困難。しかも、この技術体系は、自分が生み出す大量の放射性廃棄物を、安全に処理することができない。すべてのイデオロギーを排除して考えてみても、原子力発電からの脱出こそ、人類が選択すべき正しい道である、と。
 中沢さんは、原子力に替わって何を使うべきかについては、いわゆる「自然エネルギー」など太陽から「贈与」されたエネルギーを地球で受け止め、それを生態圏の内部に持ち込む手だてとしての技術、すなわち原始の地球上で原始的な植物がはじめた光合成など生態圏生成の運動を人類は模倣することによって、新しいエネルギー体系を作るべきだと主張する。「生態圏をただ収奪するのではなく、生態圏を甦らせることによって、人類ははじめて、地球上でほかの生き物を益する生き物となるであろう。」そして、彼はこのような大転換は、「日本文明を収縮させたり、弱体化させるのではなく、むしろ文明としての自分たちの本性への立ち返りを実現することになる。そして私たちは、そこから新生への歩みを開始することができる」と中沢さんは主張している。

 最後に私自身の意見をごく簡単に要約しておこう。私自身はこれまでも、原発の推進派でも反対派でもなく、いわば慎重派という立場で来ていた。その最大の理由は、原子力技術は、放射性廃棄物の処理・最終処分すら出来ていない未完成のシステムであるということに尽きる。取り敢えず危険な廃棄物は保管してあるに過ぎない。しかも、その保管量はどんどん膨れてきて、溢れんばかりになっている。これまで日本は高速増殖炉の開発や使用済み核燃料の再処理施設、最終処分場の建設など試みてきてはいるが、未だ成功していない。そのような中で、原子力発電を続けることは、東電・福島での悪戦苦闘ぶりを毎日見せられているように、危険なだけでなく、物理的に限界に近い。そういう意味から私自身は、既設の、安全に使える原発に限って今しばらく(10年~20年くらい)上手に慎重に利用し、その間に省エネと自然エネルギーの活用を徹底し、最終的には原発を廃止すべきだと思っている。つまり、性急な即廃止派ではないが、基本的には、脱原発に組する。
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by JAES21 | 2011-08-25 17:08 | 会報巻頭言『風』



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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