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安保関連法の制定と関東・東北豪雨被害

本年5月以来、特にこの1ヶ月ほど安全保障関連法を巡り、国会内外での動きにネットはもとより、新聞・テレビも連日、様々に大報道している。

安倍首相は集団的自衛権の行使を含む安保関連法が必要なのは、東アジア中心に日本を取り巻く安全保障環境が大きな変化を見せており、それに対応して「国民の生命と平和な暮らし」を守り抜くため、これらの法案が必要と繰り返し説明した。

この関連法案が国会内外で白熱していた9月9日から10日にかけて、栃木・茨城両県で8本もの「線状降水帯」が通過し、鬼怒川の上流では、24時間雨量が500㍉を越えたという。私自身、線状降水帯なる言葉を聞いたのは初めてだが、この気象用語を知らなかった人も多いのではなかろうか。

この線状降水帯は栃木、茨城に豪雨と大洪水を引き起こしただけでなく、さらに宮城にも同様に甚大な被害をもたらした。特に鬼怒川下流の茨城県常総市では、堤防が決壊するなど洪水や浸水が拡がり、8名の人命と家屋・財産、田畑、道路・鉄道など甚大な被害が与えられた。まさに安倍首相の言う「人命と平和な暮らし」が、軍事力ならぬ気象災害によって失われた。

しかも、このような気象災害は今年だけのことではなく、毎年のように日本列島を襲っている。特に昨年8月、広島市街で土砂災害を引き起こし74名の命を奪った豪雨は、今も記憶に新しい。問題は、安倍政権のみならず、日本の与野党が地球温暖化を背景とし毎年のように襲い来る異常気象から、国民の生命と平和な暮らしを守るためにどれだけ頑張っているかである。

少なくとも私には、与野党問わずこの問題には極めて鈍感であり、安保法制で見せたような政治的な動きには全くなっていないように見える。かつて日本の与野党は地球温暖化対策には熱心に見えた時期もあったが、今ではすっかり停滞し、経済によいというだけで、石炭火力発電や原子力の再稼働を許し続けている。

さすがに、環境省だけは、これに歯止めをかける動きを見せてはいるが、安倍総理は安保関連法案の成立以降は、経済政策を最優先すると言明している。経済を最優先する中で、経済に悪影響を与えると誤って考えられている温暖化政策にどれだけ力を入れるのか甚だ疑問である。人間の生命や平和な暮らし、安全・安心は、何も軍事力による脅威だけではない。

今や、日本のみならず世界で常態化しつつある異常気象の脅威をもたらしている地球温暖化対策に今こそ真剣に取り組まなくてはならない筈だ。
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by JAES21 | 2015-09-29 17:30 | 加藤三郎が斬る
ジョコ大統領の賢明な決定
ジョコ大統領の賢明な決定

安倍晋三内閣になって、アベノミクスの一環として、原子力発電施設や各種インフラの海外輸出に大きな力を入れている。最近、特に目立つのは、新幹線の海外輸出だ。報道によると今回話題となったインドネシアの他、アメリカ、トルコ、ベトナム、タイ、インド、マレーシア・シンガポールに高速鉄道計画があり、それに日本の新幹線技術の採用を求めて、猛烈な受注競争を官民で展開しているようである。

日本の主な競争相手は中国。インドネシアでは、首都ジャカルタとバンドン間140Km(東海道新幹線でいうと東京-新富士間にほぼ匹敵)を結ぶ高速鉄道計画を前ユドヨノ大統領時代に発案したそうであるが、昨年10月に就任したジョコ大統領は、あまり熱心ではなかったとのこと。しかし、ジョコ氏が中国を訪問した後、中国も猛烈に絡んで、つい最近まで日中のどの高速鉄道システムをインドネシアが採用するか、関係者だけでなく私のような人間まで大きな関心を寄せていたものである。

インドネシアの関係閣僚が協議を重ねた結果、9月3日、ジョコ大統領は高速鉄道計画を白紙に戻し、中速(時速200kmから250km)の鉄道を新たに作ると決めたとのこと。

日中両国は、インドネシアと浅からぬ政治・経済関係を築いてきただけに、今回の鉄道計画では、技術・資金双方の面でメンツも掛け、全力を挙げて受注競争を繰り広げた。しかし、結果は、日中両国にとって肩すかしになったわけだ。

インドネシア側から高速鉄道計画を持ちだしておきながら、何故中速鉄道に計画を変更したのかははっきりしないが、報道によると、わずか140km程度の区間で時速300km超の高速で走らせる必要はなく、しかも、そのコストとして6,000億円前後掛かるとなれば、なおさら慎重にならざるを得なかったようである。確かに140kmの間を時速300キロで走るとなれば、最短で28分、250kmだと34分弱。200kmで走れば42分ということで、いずれにしても、さほど時間の短縮となるわけではない。まして、途中駅のことも考えれば、高速のメリットは限定されるだろう。

ジョコ大統領にしてみれば、おそらく、日本・中国が提案したどちらかの案を取ることによって、他方との関係悪化を恐れたという政治的考慮もあったろうし、また、なぜ高い費用を払って高速で走らせねばならないのか得心いかなかったのだろう。

中速鉄道で充分だというジョコ政権の決定は、私は、なかなか味な、賢明な決定であったように思う。

この件で、私はただちに日本のリニア新幹線事業を思い出した。
東京と名古屋の間を40分で結ぶために、5.5兆円以上もの巨費を掛け、しかも、安全が十分に確保できるかも分からず、電力は3倍程度も使い、9割近い区間で地下深いトンネルを時速500kmで突っ走るリニア鉄道事業を廃止も含めて見直すよう、私は、過去にも何度も意見を公表しているが、ぜひジョコ大統領の知恵もこの事業に反映してもらいたいものである。この計画は既に動き出しているが、やがて困難にぶつかるであろうその時には、ジョコ流に転換するのがベストだと今も思う。
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by JAES21 | 2015-09-08 16:28 | 加藤三郎が斬る
「株屋政治」を嘆く
ここ一週間ほど、新聞やテレビを見ていると株価の乱高下を伝えるニュースが目立つ。発端は中国上海の株が暴落したことだが、それにつれて東京やNYなどの主要な株取引所でも株価は大幅に落ちて、「世界同時株安か?」などと大騒ぎをしている。

その心配は株屋の世界だけに留まらず、中国政府は何をしているのか、日銀は何をしているのか、政府与党は何をしているのか、日銀の黒田総裁を国会に呼べ…など永田町の議員たちの間でも声高に語られているという。与党のある人は、せっかく首相の「70年談話」で内閣支持率が上がったのに、今回の株暴落で安倍内閣の支持が下がるのではないかなどと騒いでいるらしい。

要は、世界も日本も、ジェットコースターのような株価の変動に振り回され、蜂の巣をつついたような騒ぎになっているらしい。いわゆるグローバル金融市場になって、株価も経済の実態を反映せず、もっぱら投機筋の利害で動く事態になってきたのをみれば、政治家や政策に株価を委ねるのは、適切ではなく、嘆かわしいと言わざるを得ない。これでは、日本の政治も「株屋政治」に堕したといってもいいかも知れない。

株価で政治が大騒ぎしているその一方で、気候変動による異常な現象は世界各地で猛威を振るっている。アメリカのカリフォルニアなどでの猛烈な山火事などは、気候変動によって乾燥が常態となり、地下水もどんどん下がっている中での気象災害だ。もちろん山火事だけでなく、強力な台風、ハリケーン、干ばつ、竜巻などオンパレードだ。

また、人口の減少、高齢化が進み、その煽りを受けて、地方が衰亡し、消滅していく問題もある。
一方、12、3歳の少年少女が真夜中の閉店した商店街を何時間もさまよっていても誰も保護しないという現実も我々は見せつけられている。学校のみならず、家庭や地域での教育はどうなっているのかという寒々とした風景だ。

これらの中長期の時間を掛けて進行してきた問題は、与野党含め政治家とそれを支持した国民が適切に対応してこなかったツケの典型だ。しかも、それは、株価の急落ほどの目に見えたショックを我々の社会に与えないものの、ボディブローのように、社会の活力とそれに立ち向かう叡智とシステムをボロボロに蝕んでいるのだ。要は、我々は政府という3mから5m先の足元しか照らさない夜間の高速バスに乗っているようなもので、20m先、50m先は最早、照らしもしないし、見ようともしない。

我々1億2,700万の国民は、そんな政治家が運転する高速バスに乗っており、何か事故が起これば、政府担当者には「想定外」で済まされる。気候変動も、地方の衰亡も、教育の荒廃も想定外。女性の地位は依然として低いままであるし、労働者の多くを非正規という身分に留めている。これらの厄介な問題はいずれも今の政治家にとっては想定外で済ませようとしているのではなかろうか。

つまり、本来、与野党の政治が真剣に取り組むべき問題はほどほどにし、「株価」に象徴されるような足元の経済問題ばかりに血道を上げる「株屋政治」の下で我々は生きているという現実の危険さをいわば共犯者である国民一人ひとりが改めて覚悟すべきなのだ。
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by JAES21 | 2015-08-27 14:49 | 加藤三郎が斬る
東京五輪の開催時期の再検討を
2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地として東京が決定したとき、私はこの決定を歓迎するとともに、夏場に開催されることに対して疑問を呈した(『2020年東京グリーンピックはいかが?』環境と文明巻頭言 2013年10月号 )。

その年の夏も猛暑による熱中症が大きな話題となっていたということだけでなく、2020年は京都議定書に代わる地球温暖化対策の新しい法的枠組みの発効が予定される年なので、尚更、地球温暖化への配慮も一つのテーマにしたオリンピックすなわち”グリーンピック”の開催を求めたのである。

東京オリンピックに関する最近の関心事は、新国立競技場の建設問題に集中している観があるが、依然として、酷暑での開催に対する多くの人の懸念が消えたわけではない。

実際、東京五輪は、2020年の7月4日から8月9日にかけてがオリンピック、パラリンピックは8月25日から9月6日にかけて開催されることになっている。この時期、東京周辺の夏が酷暑になるであろうことが解っていても、アメリカやヨーロッパでのテレビ放映権を有利に獲得しようとIOCは7月15日から8月末までの開催を求めていたという。オリンピックの全体的な管理をするIOCが、その開催費用や準備費用を賄うためにお金が必要なことは言うまでもないが、猛烈な酷暑が予想されるこの時期に東京およびその周辺でオリンピックを開くことの、選手及び観客、それをサポートする多くの人々の健康と安全を考えると、この時期の開催が適当なのか、今でも極めて疑問である。

今年の猛暑ぶりについては、多々報道されている通りであるが、総務省消防庁の統計によると8月3日から9日までの一週間だけで、11,219人が熱中症による救急搬送を受けたという。そのうち、死亡した人が32名。重症が331名というから、やはり心配である。ついでにいうと、この11,200人ほどの搬送者は、昨年の同期間と比べると2倍強増えている。だからといって、2020年に同じような状況になるとはもちろん分からないが、一般的には温暖化のテンポが加速しており、不幸な場合には、オリンピックのいくつかの競技の取りやめないしは大幅変更せざるを得ないような大混乱になるかもしれない。

ちなみに、2022年にカタールで開催される予定のサッカーのワールドカップは、例年通り6月から7月にかけての開催を予定していたが、この時期だと選手や観客等に対する猛烈な暑さによる影響が心配されたため、11月~12月に変更したと伝えられているが、この変更は賢明な判断だったと思う。

競技者が安心してプレイできる環境を整えることはもとより、観客など多くの五輪関係者の健康保持を考えると、猛暑が発生する可能性がある時期をずらす交渉を今からでも日本は始めるべきではなかろうか。酷暑との戦いで大混乱した五輪として記憶される事態を避けるためにも二の足を踏んでいる暇はない。

その一方で私自身は、このようなことをすれば、地球温暖化の脅威の現実が世界中の人々に否応なしに共有されるまたとない機会にもなるという思いをひそかに抱かないわけではないが、熱中症など人命の心配のない、万全で安全なオリンピックが望ましいことは言うまでもなかろう。関係者の賢明で勇気ある再検討を期待する。
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by JAES21 | 2015-08-18 17:30 | 加藤三郎が斬る
2520億円
2520億円

今の日本では、安保法案協議を巡る国会でのごたごたや、株の乱高下など不安な要素が多々ある中、約一か月に亘って、日本を明るく元気づけてくれたのは、言うまでもなく女子サッカーなでしこジャパンの大活躍である。彼らは初戦から負けなしで、果敢で溌剌とした試合ぶりで、最後の決勝戦の日まで日本中を沸せてくれた。普段、あまりサッカーを見ない私ですらなでしこの戦いぶりに一喜一憂したものである。

優勝を逃したとはいえ、準優勝の銀メダルとは誠に立派なものであり、その熱い戦いぶりを見た多くの日本人の称賛は当然である。

そのなでしこの活躍ぶりを伝えるニュースのなかで、気になるニュースがあった。それはナショナルチームの中に何人も、サッカーだけでは食べては行かれず、アルバイトをして生活費を稼ぎ、その残りの時間をサッカーの練習や競技に充てている人がいるという事実である。なでしこが4年前にワールドカップを制してもなお、そのような厳しい状況が続いていることには心を痛め、男子はもとより欧米の女子サッカーチームのように生活の憂いなく競技に没頭できるようにならないかと思ったのは私だけではないだろう。



そのようなニュースが伝えられた同じころ、新国立競技場の建設費の話がこれまた大きく報じられた。ご存じのように、当初1625億円程度の予算で、新国立競技場を再建するということであったが、いくつかの理由によってこの建設費は約900億程度膨らみ、現時点では2520億円になり、しかも、この費用をもってしても、当初予定した可動式の天井などはオリンピック後になるとのことであり、その上に工期が間に合うかどうかの懸念もあるとのことだ。

オリンピックをする以上、然るべき競技場が必要なのは言うまでもないが、難しいアーチ構造のデザインのために様々な問題が起こっているという。

この2520億円の一部でもあれば、なでしこジャパンの人たちの生活環境も大いに改善されるだろうと思わざるを得ない。肝心の人にお金をかけないで、建物にお金をかけるのは愚かしいことではなかろうか。

さらに言えば、この2520億円あれば、慢性的な資金不足に悩む環境NPOがどのくらい救われることになるであろうか。単純に私たち環境文明21の事業規模を多少大きくしても、2520億円あれば、ゆうに2500年は賄えることになる。別の言い方をすれば、同等程度の事業規模を持つNPOが100団体あっても、25年は活動出来る費用である。

私が言いたいのは、非常に厳しい時代を迎えるであろうこれからの日本で、物にお金をかけるのか、それともスポーツであれ、NPOであれ、人にお金をかけるのかの選択は非常に重要となってくる。

その選択においては、もっと人にお金をかけて、世界的なレベルで活躍できる広範な人材を育成すべきであると考えるが、どうであろうか。
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by JAES21 | 2015-07-14 17:30 | 加藤三郎が斬る
ローマ法王の慧眼
ローマカトリック教会のフランシスコ法王が6月18日、全世界のカトリック信者に向けて、環境に関する回勅を出したというニュースをBBC放送や日本の新聞各紙で知った。
ローマ法王が環境に関し、どんな発言をしたのか大変気になったので、インターネットを通じて、回勅なるものの全文や、法王がツイッタ―を通じて発信した回勅の要約などを見て、ローマ法王の慧眼に大いに敬意を表するに至った。

このフランシスコ法王は今年の3月、バチカンを訪問した日本カトリック司教団と会談した際、東日本大震災で起きた福島第一原発事故などを旧約聖書のバベルの塔になぞらえ、人間の思い上がりが、文明の破壊を招くと警鐘をならしたとのこと。私はそれについての記事を見たときに、この法王はカトリックの宗教者というだけでなく、社会的な問題に対しても並々ならぬ関心のあるお方なのだと改めて知って、この記事を切り抜いて取っておいた。

それから3か月経って、地球環境の悪化と世界の貧しい人々の生活に絡めて法王が述べている長文の回勅に接して、素晴らしい知恵を持っている人だと今、改めて読み込んでいるところだ。

私は日本の典型的な仏教徒であり、ローマ法王などとは全く縁遠いと思っていたが、この回勅を読み進めるにつれて、彼の知恵に魅了されつつある。

法王は、1930年にアルゼンチンのブエノスアイレスで、鉄道員の子として生まれ、貧しい人たちの生活を間近に見てきた方だけあって、12億に及ぶカトリック信者の頂点に達した今も、その生い立ちや若い頃の生活を忘れずにいるようである。

彼の環境問題に対する知恵に満ちた言葉は沢山あるが、このブログでは一つだけ取り上げておこう。

それは「環境危機と社会的な危機という2つの危機があるわけではありません。それは一つの極めて複雑な環境・社会問題があるだけです。」と述べている点である。

彼はツイッタ―でも「環境と社会の悪化はこの星に住む最も弱い人たちに影響を与えます。私たちは地球の叫びと貧しい人々の叫びに耳を傾けねばなりません。」「貧しい人々とこの星のもろさの間には密接な関係があります。」と指摘している。

多くの環境専門家が、環境悪化の原因を大量生産・大量消費、そして、化石燃料の多量の使用などに絡めて述べるが、先進国、途上国を問わず、世界中で苦しんでいる多くの貧しい人について触れる人は少ない。また、貧困問題を論ずる人で、地球や環境問題の悪化に触れる人もまた少ない。ローマ法王は、これら二つの大問題は、決して別々の問題ではなく、共通の根を持つ、そして、その共通の根とは、科学技術に依拠した私たちの使い捨て文明にあるという。一方で、気候変動など地球環境の止まることのない悪化を生み、また一方で、豊かな者は益々富み、貧しい者は益々貧しくなるという今日のグローバル化した資本主義の下で、過酷な競争論理から出てくる結果について法王は触れているのだ。

ローマ法王の体験と叡智から生まれるこの指摘は、新鮮であると同時に重要な点であり、私自身も、この問題について突き詰めてみたいと思う今日この頃だ。
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by JAES21 | 2015-06-30 17:30 | 加藤三郎が斬る
政治の時間軸をもっと延ばせないだろうか

政治や行政は、どこの国でもいつの時代でも様々な難問題を抱える。
比較的小さな問題もあれば、どう解決したらよいのか難しい、極めて深刻な問題もある。
そう言う問題に立ち向かい、一歩でも解決への道筋をつけるのが、政治、行政の役割であり、責任である。

最近の日本の動きを見ていると、確かに問題に取り組んではいるものの、政策の時間軸があまりにも短すぎるとの感を深くしている。

二つ例を挙げよう。

一つは、気候変動問題への対応だ。
これは、このブログや会報『環境と文明』でも常に触れているので、詳しくは述べないが、この巨大な問題に対し、日本の政治や行政の対応ぶりを見ていると、足元の問題にとらわれ過ぎているように思う。別の言い方をすれば、中長期的に問題を見ようとしていないとしか思えない。

「原子力発電所が止まっているから、とにかく再稼働すればいい。」
「一番安い燃料である石炭を何とか使えばいい。」
「再生可能エネルギーや省エネの技術開発の重要性は分かっても、費用はどうする。送電網の整備だけでも時間と費用が掛かる。」

と言った具合に、中長期的な課題に目を背け、足元で出来る対応で何とかしのごうとしている。足元の連続が中長期的な課題の解決にも繋がればよいのだが、石炭火力発電所の増設や、原子力発電所の再稼働などは、21世紀の課題解決には繋がらない。

現に、安倍総理が、今回のドイツサミットで公約した2030年に13年度比26%削減や、2050年80%以上削減といった中長期的な課題の解決には、なかなか繋がらないのが問題だ。

もう一つ。人口についても専門家の間では、20年以上前から限界集落の発生が伝えられ、繰り返し、日本の人口の減少や高齢化に警鐘が鳴らされてきた。しかし、この問題に本格的に取り組もうとしたのは、ここ2、3年だ。

消滅可能性自治体が具体的に名指しされ、慌ててこの問題に取り組もうとしている。最近に至っては、若者、特に女性の流出を何とかとか、経済団体が主導する婚活とか、さらには首都圏に住む高齢者をなんとか地方に移住させないと介護などの対応が出来そうにないという話が飛び交っている。

もし、日本の政治家や行政が、20年前から昨日、今日言われる対策に取り組んでいれば、事態は今日ほどの深刻さはなかったのではないか。

たった二つの例を取ってみても、日本の政治家や行政機関の時間軸が、せめてあと10年長ければ、問題への対応ぶりも相当変わっていただろうと思わざるを得ない。
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by JAES21 | 2015-06-16 17:30 | 加藤三郎が斬る
環境省の存在理由が問われかねない
あと数日もするとドイツ南部の小さな都市でメルケル首相の議長の下、先進国首脳会議(G7)が開催される。

この会議では、ウクライナ、ギリシャ、中国などの問題も当然議題になると思うが、COP21に向けて気候変動への対応もまた大きな議論になるはずである。

実際、その議論に備えて、日本でも、エネルギー特に電力の電源構成など議論されている。政府は、温室効果ガス削減について、2013年度比で2030年に26%削減するということに、本日6月2日、決定したようだ。

経済産業省などの説明によるとこれは欧州に遜色ない数字であるというが、EUは1990年比で2030年に少なくとも40%削減を明言している。日本の2013年比26%というのは、90年比で見るとわずか18%の削減に過ぎず、単なる数字のごまかしで、欧州と遜色ないと言っても国際社会で通用するとは思わない。

2013年を基準年にした愚は、既にこのブログでも論じたので繰り返さないが、少し関連する数字を見てみよう。

2013年比26%削減するということは、年間に換算すると今後毎年1.5%前後削減しなければならない。しかし、日本は長いこと削減どころか排出量を増やし続けているので、26%でも相当な覚悟が必要だ。しかも、温暖化対策は2030年が終点であるはずもなく、その先2040年も2050年もこの問題は続く。日本を含む先進国は、2050年までに少なくとも80%削減をコミットしている。

絶対値でみると90年の温室効果ガス排出量は、12億7千万トン、2013年では14億800万トンであったので、2030年までには10億4,200万トンまで下げ、2050年には、少なくとも2億5,400万トン程度にまで下げなければならない。このレベルまで下げるのには、今後37年ほどで現状からおおよそ11億5,400万トンほど削減しなければならない。

日本の過去の実績はどうかと言えば、1990年から2013年までの23年間で、削減どころか1億3,800万トンも増加している。今後2050年に向けて約11億5,400万トン下げていくには、大変な努力が必要であることがお分かりいただけるだろう。

今、環境行政は、産業界に対しては、自主的な行動に任せている。自主的な行動でこれだけ下げるのは不可能であることは専門家ならずとも明らかである。必要なのは規制であり、そしてまた炭素税や排出量取引を含む経済的手法であり、そのような政策を支える国民の意識改革である。
このいずれについても、今現在、表立った議論は全くない。環境省も中央環境審議会も規制や経済的な手法について具体的な議論があるとは聞いていない。「環境保全」が「経済成長」にがっぷり飲みこまれて、手も足も出ない状況と私には見える。こんなことをしていたら、2030年どころか2050年にかけても目標達成は不可能で、まさに環境省の存在理由が問われかねない事態になることは明らかだ。
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by JAES21 | 2015-06-02 17:30 | 加藤三郎が斬る
経営者「環境力」クラブ第一回会合終わる

環境と経済との関係は古くて新しい問題である。

今から半世紀ほど前、私が厚生省公害課において環境対策を進めていた時も、経済官僚や経済界の中にも「環境対策はカネとヒトを取られるばかりで、企業にとっても国全体にとってもマイナスだ」「環境対策は必要悪」などの意見が結構あったが、私はその見方は正しくないと繰り返し主張してきた。

90年代に入ると環境経営や環境ISOなどが大企業を中心に導入されるようになり、雰囲気は多少改善されたが、それでも地球温暖化対策を巡る議論は、今でもホットであり続けている。

私の50年に及ぶ環境対策は、この環境対策と経済に絡まる問題との戦いの歴史だと言ってもいい。
そのような中、今から十数年前、トヨタなどのいわゆる優良企業の多くが、環境対策に積極的に取り組んでいるにも関わらず、大きな利益をあげる企業であることを見て、その力を私は「環境力」と名付けた。いわば、アイザック・ニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力を発見したようなものだと称してきた。

今では「環境力」とは環境の現実と未来を科学に基づいてしっかりと見つめ、対応戦略を練り、技術や社会システムの変革を実施し得る総合力と考えている。

そのような考えの中から、環境文明21は、2008年度に経営者「環境力」大賞というプロジェクトを始めた。特に中堅中小企業においては、その経営方針や運営の意思決定に決定的役割と責任を有するのは経営者である。その経営者が先ほど述べたような環境力を持っているか否かが、その企業の盛衰に極めて大きな影響があると思い、環境力を活用したユニークな経営をしている経営者を表彰するプロジェクトを実施したのである。

過去7回開催し、業種を問わず、企業の規模に囚われず、40数名の経緯者の方々を表彰してきた。そして、昨年の12月には、それまで表彰を受けた経営者が中心メンバーとなって、「経営者環境力クラブ」というものを立ち上げた。

このクラブの目的は、環境力大賞受賞者が互いの環境力をより高め合うとともに、日本の企業社会全般の環境力の向上に寄与することを目的としている。

そして、この会の実質的な第一回の会合が昨18日開催された。ここには、経営者十数名が参集し、活発な意見交換がなされた。特に、会員相互の環境力向上はもとより、若手経営者や学生など広く社会に「環境力」を広める活動をすることを改めて誓いあった。

今後のこのクラブの発展が楽しみである。今後もホームページや外部WEBマガジンなどを通して発信を続けていくのでご注目いただき、クラブの活動にもご参加願いたい。
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by JAES21 | 2015-05-19 17:30 | 加藤三郎が斬る
2013年?なんだこりゃ!!
新聞など最近の報道を注意して見ている人は、日本の温室効果ガス削減レベルを何パーセントにするかで、政府内で一部産業界を交え、大騒ぎになっていることに気が付いておられるだろう。今年の末にパリで、新たな気候変動(温暖化)対策の法的な枠組みをつくる国際会議(COP21)が開催されるが、この騒ぎは、それに向けて国際社会が何年も掛けて論争してきた結果、先進国など能力のある国は2020年以降、それぞれの国がどのくらい温室効果ガスの削減をするかを含む約束草案を今年の3月末までに提出することになっていた。早くもスイスは2月27日に90年比で2030年までに50%削減という数値を出し、EUもまた3月6日には、少なくとも40%削減という数値を出していた。

京都議定書には参加しなかったアメリカも3月末に2025年までに05年比で26~28%削減という幅のある目標数値を提出したが、28%に向けて最大限取り組む旨のコメントも出している。ロシアも4月1日に90年比で2030年に25~30%削減を正式に約束した。

ところが、日本は2020年の目標で3.8%削減という暫定目標と2050年80%削減目標はあるが、それ以外については全く目標がなく、完全に乗り遅れ。しかし、6月7日、8日にドイツで先進主要7か国会合(G7)が開かれ、この席上に、温室効果ガス問題を重要視するオバマ大統領やメルケル首相が主要な議題に据えることは間違いないということから、この席で安倍首相がぼんやりうち過ごす屈辱的な事態を回避したいとの考えからか、この数か月、経済産業省、環境省、外務省それに自民党のエネルギー・環境議員も参入してバタバタしているわけである。

つい最近の報道によると、どうやら政府は2030年の排出量を約25%削減という方針を決めつつあるようで、この案を4月30日に開催される経産省と環境省の合同審議会に提出することになっているらしい。問題はこの削減をどの年のレベルからの削減にするかを巡って争いがあり、2013年説や05年説を紹介している。

2013年というと関係者はすぐにピンとくると思うが、日本の温室効果ガスの排出量はこれまでで最大級の14億800万トンとなった年である。ちなみに90年だとこれより10.9%低い12億7000万トンであり、また05年を基準にすると13年に比べて0.8%ほど低くなる。経産省の役人たちは実質的な削減幅を数字の見かけよりも、1%でも少なくしたいという思惑からか、2013年説を主張しているように報道からは伺え、全くもってあきれる話である。

温暖化対策上、国際的に共通性を持つ基準年は、長いこと1990年であった。京都議定書の親条約である国連の温暖化防止条約のときに1990年が基準年として使われたことにもよる。その後2050年に向けて先進国は80%以上の大幅削減が必要とされているので、2030年は最終年度でもなんでもない。2040年も2050年も2100年もある。これに向けて大幅に削減、ゼロ乃至はマイナスにまで削減しなければならないというのが科学者のコンセンサスである。それなのに一途中段階にしかすぎない2030年の削減幅を少しでも値切ろうとあがいている姿はみっともないというより、日本の国益に反すると言える。まさか安倍さんがドイツに行ってオバマ氏やメルケル氏の前で、我が国は1%でも削減量を値切りたいので、2013年を基準年としましたと説明するのだろうか。もしそうであれば、ヨーロッパやアメリカ、中国の産業人は、そのような退けた政策ならば日本の省エネ技術開発力・競争力は一段と低下するとほくそ笑むだけだろう。

短期利益追求に明け暮れる経済産業省は、名前を変えて不経済産業省とすべきではなかろうか。
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by JAES21 | 2015-04-28 17:30 | 加藤三郎が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
by JAES21
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