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カテゴリ:加藤三郎が斬る( 158 )
今こそ抜本的転換を
東京電力の福島第一原発の事故からちょうど5年になる。東電はじめ関係者による事故処理は、必死になされているようではある。それでも原発周辺の自治体では、除染などが進み避難解除が進んできても、この5年間の生活パターンから元の福島の生活に戻ることは難しく、人口の大幅減少は続いているし、今後の復活の見込みもかなり困難な状況である。

そのような中にあっても、日本のエネルギー環境政策は、原発の再稼働や石炭火力発電所の新増設の動きを強めるなど、まるで旧時代への復古調が著しい。

その一方、昨年末に画期的な合意とされたパリ協定が、発効する先を見据えて、世界の主要な国や企業は、脱化石に向けて活発に動き出している。特に、自動車業界、金融、IT関連、あるいは地方公共団体などでの先取りの動きは、かなり顕著なものがある。伝えられるところによると、アメリカでは多数の市長や下院議員が、再生可能エネルギーの比率を2030年には50%、2050年には100%を目指すと表明しているという。また、米議会では、再エネ関連の税控除が5年間延長されることになったようである。当初は、共和党からの激しい反発により、延長は不可能と見られていたが、時代の流れを読んだ新たな動きと見ることも出来る。さらに、金融や投資機関は、最早、パリ協定が目指す「脱化石社会」を先取りするがごとくに、例えば石炭火力など、化石燃料に投資している企業から資金を引き揚げようとする動きや、また、逆に再生エネ比率100%実現を宣言する企業なども増えているようである。

このように、世界はパリ協定の発効を先取りするごとく一斉に動き出している感が深いが、日本は相変わらずである。日本の中でも温暖化対策はこれまで、相当な努力は続けられていたことは確かである。照明をLEDに替えたり、ハイブリッド車を普及させ、そして水素燃料社会を目指す動きも出てきている。しかしながら、国内でのCO2など温室効果ガスの排出量は、90年時点から、多少の増減はあったもののほぼ横ばいで、直近のデータでは、原発停止の影響も多少はあるにしても、90年から7.5%の増加を示している。米国をはじめ欧州の主要国などは、この間に温室効果ガスの排出を相当減らしているのに、日本は足踏み状態を続けているのだ。

さすがに、省エネ法の規制強化を図るなど、経済産業省もかなり力を入れているようであるが、根本のエネルギー構成比率は、パリ協定が合意された後でも、全く変えようとしていない。即ち、2030年において、原子力は総発電量の20~22%、再生エネは22~24%、石炭は26%といった電源構成は変えていないし、パリ協定を受けて、この比率を変更する議論を寡聞にして私は知らない。メディアも本気になってこの問題を取り上げているようにも見えない。

こう見ると、繰り返しこの欄でも主張してきたように、日本はエネルギー・環境政策の部門で、世界をリードするどころか世界のトップランナーの背中も見えないほどに遅れてしまったと言っても過言ではなかろう。ソーラーパネルの技術開発や普及を真っ先に尽力したシャープが今、日本の原子力優先・再生可能エネ軽視の政策も背景にあってか、台湾のホンハイに買収されようとしつつあるのも、このまま行くと日本の先端企業全体の運命を暗示しているように見えるのは私だけであろうか。

エネルギー・環境政策を抜本的に転換しなければ、日本に未来はないのだ。
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by JAES21 | 2016-03-01 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
廃棄物処理は地球を磨く仕事
しばらく前のこと。
廃棄された冷凍カツなどが転売された事件が、人々の注目を集めた。

何せ、本来は廃棄物として適正に処理されていなければならなかったものが、スーパーなどを通じて、堂々と食品となり人々の口に入っていたというのだから、人が驚くのも当然である。
このニュースに接した時に、私が思ったことは、たった一社の不正行為のために、産廃業者の信頼がまた失墜するのではないかという懸念と共に、まじめに働き、廃棄物処理事業に携わっている多くの人のため息が聞こえるようで極めて残念であった。

実は、私は30年ほど前、3年足らずではあったが、厚生省で廃棄物行政を担当していた。この頃も不正投棄事件などもいろいろあって、廃棄物処理に係る業界に対する社会の目は、とても厳しいものであった。それに加え、汚れ仕事ゆえに社会からのいわれなき偏見や誤解に苦しむ真面目な業者は少なくなかった。

実際、福岡県のある業者が社会の偏見に苦しむ心やまた、社会から投げかけられる心無い言葉やしぐさに対する静かな抗議を込めた詩歌集を出版していた。そこにはこんな句が書き連ねてあった。

清掃夫 悔しき事の多ければ ひたすら求む一杯の酒

職をもて 卑しむ人とされるわれ 幾夜悩みぬ人間の価値

それを読んだ私は、廃棄物処理という極めて重要な仕事に携わる人に対する応援歌をつくろうと思い立ち、次の清掃賛歌を詠んだ。

清掃賛歌
1.清掃は地球を磨く業なるぞ これほど大事な職はあるまじ
2.清掃はかくも貴き仕事なのに なぜひ世間はそれを解さぬか
3.清掃に精を出してるわが友よ いざ誇らかに頭を上げよ

それから30年。
この間、社会で無くてはならない廃棄物処理に携わる人々の人知れぬ努力により、社会からの信頼もずいぶん増してきたのではないかと思われていたこの時期にまたしても不祥事件の発生である。しかしながら、数ある業者のうちの一社が行った不正により、業界全体が悪く見られる謂れはない。これまでと同じように倦まずたゆまず、社会にとって不可欠な仕事を続け、社会の信頼を積み上げていくしかない。また、それが可能なよう、行政も業界中枢としても、様々な制度の改革を続けていく必要がある。
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by JAES21 | 2016-02-16 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
「無電柱化推進法」成立の期待
本日、2月2日付の毎日新聞によると、全国245人以上の首長からなる「無電柱化を推進する市区町村長の会」が昨日首相官邸にて安倍首相と会談し、電線の地中化を推進化する法案の成立と自治体の負担軽減のための予算確保を要請したという。

記事によると首相は、「国民誰もが賛成する話だ。2020年の東京五輪・パラリンピックまでにスピードを上げ、頑張って進めましょう」と前向きな姿勢を示したという。私自身は、この問題に随分前から関心を持って見てきた。

若いときに三年間、パリにあるOECD代表部で環境担当の書記官として過ごしたあと、東京に戻ると、都市景観が電線電柱、野外広告などが一杯で、本来ならもっと美しい街の景観が損なわれていることに心が痛んだ。また、ひとたび地震や台風などの災害があったときは、電柱・電線は復旧を妨げる大きな原因であると見ていたからである。

今から37年程前、当時、環境庁の若手職員が自主的に立ち上げた、アメニティ研究会の座長であった私は朝日新聞の論壇に「電線を地下に埋めよう~美しく安全な都市を作るために(昭和53年10月14日付)」と題して投稿したことがあった。すると、すぐに東京電力の担当者が、環境庁の私のところにやってきて、電線電柱の地中化は無理だということを強調して行った。その時の理由は、地中化はコストが極めて高いこと。また、停電の際には、地中にあるとどこで停電したか分からず復旧が遅れるなどを強調していたように今でも覚えている。

この二つの理由のうち、地上に比べコストが高くなることは、当時も今も理解しているが、どこで停電したか分からないというのは、未だに理解出来ない。
なぜなら、ヨーロッパなどでは地下化は早くから進められ、どこで停電したか分からないという話は聞いたことがないからである。

それはさておき、37年前とは異なり、今の日本は、高度経済成長期ではない。人口は減り、高齢化が進み、ある意味、落ち着いた社会になりつつある。そのようなときに、都市を中心にかつて日本の街がもっていた品格を取り戻すには、電柱・電線の地中化はちょうどよい。電柱・電線が地中に入ると、屋外の広告物の乱雑さも目に直接飛び込むようになり、これもなんとかしなければ、という動きになるだろう。この他、電柱があると、歩行者や自転車の交通にもかなりの差し障りがあるので、この観点からも地中化が望ましい。

オリンピックがあろうとなかろうと本来、もっと早く進めてしかるべき対策であるが、心ある地方の首長さんたちも立ちあがったようで、この動きは大歓迎だ。

記事によれば、自民党は昨年「無電柱化推進法案」を取りまとめており、今国会に提出する予定であるという。野党の協力も得ながら、ぜひ早期に成立させてほしいと思う。
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by JAES21 | 2016-02-02 13:41 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
「パリ協定」の骨肉化のために
京都議定書の後を引き継ぎ、2020年からの気候変動対策の法的枠組みをいかに構築するかを巡り、長年に亘り、厳しい議論を続け、紆余曲折を経て「パリ協定」が歴史的な合意を達成してから一か月余が過ぎた。この間、国内外でパリ協定をどう評価するかいろいろな意見がマスメディア上には出ているが、まだ、協定の中身を骨肉化したと言える状況ではない。

「パリ協定」という名の外交文書は確かに全員一致で採択されたもののまだ発効していないことはもとより、正式な訳文すらまだない段階で、議論の進展を期待するのは無理なことかもしれない。しかしながら、「パリ協定」の意義の重大さを考えると、出来るだけ早くこのパリ協定が、私たちの社会に投げかけているメッセージをどう受け止めるか、各方面で活発な議論が展開されることが期待される。

この「パリ協定」が採択された直後の12月18日、私たちもメンバーである「グリーン連合」は、声明を発している。この声明文自体、非常に重要であるが、特に第3項において、次のように述べられている。


3.今回のパリ協定に示されたメッセージは、産業革命以降、エネルギー源として化石燃料 を大量に消費し物質的に豊かで便利な経済社会を築いてきた過去2世紀余に及ぶ都市・工 業文明を大転換し、低エネルギー消費社会の実現を一層推進するとともに、温室効果ガス を排出しない再生可能エネルギーへとエネルギー源をシフトすること、すなわち、「脱炭素」 社会の実現に社会が大きく舵を切ることを意味する。

言うまでもなく、これは国内的にも国際的にも数々の困難を伴う大仕事である。

しかし、 昨今の気候激変のスピードを考えると、パリ協定が明示するように、「今世紀の後半」には 温室効果ガスの実質ゼロ化に向けて社会のあらゆる体制を速やかに整えなければならない。


ここにあるように、気候変動の激変のスピードがますます上がってきたことを考えると、従来IPCCが今世紀末に温室効果ガスの排出をゼロ又はマイナスとしていたことが前倒しにされて、今世紀「末」ではなく、「後半」となっているところに注目する必要がある。すなわち、私たちの経済、ルールを決める政治、経済を支える技術、そして何よりこれら全体を支える教育もやはり今一度根本から見直すべきであろう。

日本の社会について言えば、ポツダム宣言を受けて日本が無条件降伏し、新しい憲法の下で再生・出発したように、私たちも「パリ協定」を受けて、あらゆる面で変わらなければいけない。そのためには、単に技術や経済の一部であるとか、物質的な豊かさを求めGDPの増大ばかり目指してきた政治であるとか、そして、そのようなことに都合のよい人材の育成を第一の目標にしていた教育も、速やかに変わらなければいけない。

私たちの社会が、持続不可能な社会にまっしぐらに突き進んでいる現状からすれば、このような変革は「パリ協定」があろうとなかろうと、必要なことではあったのだが、なかなかそのきっかけを得ることが難しかった。「パリ協定」こそ、多分、最後(?)のきっかけとなるべきである。そのためには、「パリ協定」をどう受け止めるか、実現するための道は何かといったことが、あらゆるところで活発に議論され、パリ協定に盛られた意思や施策の実現に向けての活動が活発に展開されることを期待したい。


グリーン連合声明文全文はこちら
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by JAES21 | 2016-01-19 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
リーダーの責任は重大
これが私にとっては本年最後のブログとなる。

年末に発生した事件のなかで特に私が気になったのは、東芝不正会計問題である。その内容や経緯を詳しく知っているわけではないが、この不正問題のために発生した様々な損害の故に、東芝は、国内外の事業所・工場などで働いている約1万人の社員をリストラせざるを得なくなったという。一万人前後と言えば大変大きな数だ。東芝といえば、言うまでもなく日本の名門企業で、人もうらやむ一流企業でもあった。おそらく子や孫を就職させるならば、このような会社にと願った親は多かったであろう。この不正会計問題は、一社員が操作したものではない。社長を含むリーダーたちが意識的に行った不正であり、その結果は、東芝に誇りを持ち、まじめに働いていた多数の社員の人生を大きく曲げてしまうことになった。

同じような問題は、5年近く前に起こった東電福島第一原発の未曽有の事故の場合にもあった。この場合、事故の直接のきっかけは、マグニチュード9という巨大地震とそれによる津波であるが、しかし、専門家たちはかねてから大津波の発生や原子力の安全性についての問題点を指摘していた。東電のリーダーたちがそのような耳に痛い指摘にも耳を傾け、必要な対策を取ったか否かが、地震事故の大きさに極めて大きな影響を与えた。これに関係した当時の歴代リーダーたちの責任は、重く問われなければならないし、現に問われている。この二つの例に限らず、組織の大中小に限らず、リーダーの責任は重いということを改めて思い知らされた。

暮れの24日に安倍内閣が平成28年度の予算案を決定した。政府予算としては過去最大規模の96.7兆円だという。中身を見ると来年夏に実施される参議院選挙対策用の施策が盛り込まれているのを読み取れる。そして、28年度予算案に限ったわけではないが、歳入の35%近くが国債依存であり、国と地方の借金は一千兆円を超える天文学的数字のままである。この借金はいずれにせよ国民が返していかねばならないが、そのツケ払いをするのは少し先の世代になる。安倍首相をはじめ現内閣の閣僚は、その頃は少なくとも現在のポストにはついていないであろうし、従って、直接、責任を問われ苦労することはないだろう。

よく言われることだが、今日と明日の繁栄だけを求めて、5年先、10年先、20年先の影響は考慮しないという手法が、安倍内閣だけでなく日本の政治に定着しつつあるのは極めて遺憾だ。そのような中で私が特に心配しているのは、日本はいつの間にか、教育に対する公的支援が先進国のなかでも最下位のレベルに落ち込んでしまったことである。今度の予算案でも今でも足りない教員の数をさらに減らしている。雇用の面でも非正規で働く労働者の数は4割くらいになる。こういうことを考えると日本の将来を担う子供の教育、さらにこれからを担う若手や中年の労働者の労働条件といった日本の基盤をもっとしっかり整えておかねば、将来、生活保護世帯を激増させる結果になるのではないか。いずれにしても、国のリーダー(与党に限らず野党も含め)たちの責任は極めて大きい。

明2016年がもう少し希望の持てる年になることを願いつつ、本年のブログを閉じる。
再見!良いお年を!
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by JAES21 | 2015-12-28 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
COP21の成功と日本の政治
国連気候変動枠組条約を締結して23年。その下での京都議定書から18年。そして、今回のパリ協定に向けて、本格的に準備し始めて少なくとも6年。これだけの時間を掛け、IPCCに集った科学者・専門家たちの気候変動に関する最新最良の知見をも踏まえてCOP21パリ会議は、私を含む多くの人の予想を超える充実した内容で合意された。

その合意を可能にしたのは、議長国フランスの巧みなリーダーシップはもとより、長年に亘るあらゆる関係者の努力と共に、現実に世界各地で異常気象が猛威を振るっていることであろう。京都議定書からは離脱してしまったアメリカは、オバマ政権になって一貫して温暖化対策を現世代と共に次世代を守るため、政権の重要政策に捉え、パリ会議に向けて影響力を発揮し続けた。そして、京都議定書のときはアメリカよりもはるかに少ない排出量だったが今や世界でダントツの排出国となった中国は、石炭燃料や自動車の急増による深刻な大気汚染に悩まされている。中国以外にインドなども汚染が厳しく、そういうエネルギーと環境に係る世界の現実がこのパリ会議の成功を支えたと思う。

私にとって特に驚いたのは、かねてから太平洋やカリブ海などの小さな島国が強く主張していた「1.5℃以内」目標がパリ協定に書き込まれたことだ。2℃未満の達成も難しい目標と思われていたが、1.5℃が加えられたことによって、日本はもとより各国の削減政策を見直さざるを得なくなってきた。気候変動の激しさを見れば、これも必要なことだった。

パリ協定の達成はどの国にとっても数十年に及ぶ大仕事だ。日本の政治家がこの問題にどう関与したかが気になる。150ヶ国・地域の首脳とともに、確かに安倍首相は参加したし、新参の丸川環境大臣もそれなりに奮闘したとかいろいろあるが、パリ会議の持つ経済的、社会的影響を真剣に政策に落とし込んで考慮したと思われる日本の政治家は私の眼には見当たらない。

パリ会議で白熱した議論が交わされているとき、自民・公明の大幹部たちは例の消費税軽減品目の品定めに連日大奮闘。民主党と維新の大幹部は、国会内で統一会派を作ることに大わらわ。採択されるその瞬間には、安倍首相はインドにいて、日本の新幹線と原子力技術の売り込みに精を出していたという塩梅だ。政治家にとっては、現実の問題への対処は当然必要だ。しかし、日本の主だった政治家の中で、気候変動問題を巡って150人の首脳が参集しなくてはならない気候問題の現実とそれが日本の政治・経済の今後の運用に与えるインパクトについて、どのような考えをもち、政策を打ち出そうとした人がどれだけいたのか。少なくとも私には見えない。日本の政治感度の低さと戦略性の乏しさが気になってならない。
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by JAES21 | 2015-12-15 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
気候変動パレードに見る日本人の関心度

気候変動防止に関する国連会議COP21がパリで11月30日から開催されるのに先立ち、28日(土)、晴天の東京で、「アースパレード2015」と称する集会が日比谷で開催された。

何しろ、ますます猛威を振るい始めている気候変動に対する国際会議を盛り立てようというパレードであり、しかもこれは世界の各都市でほぼ同時に開催されるので、東京でもたくさんの人が集まるのではないかと関係者の間では期待されていた。少なくとも、一万人は集めなければというのが、集会の準備をした関係者の熱い希望であった。

しかし、実際、蓋を開けてみると、会場でありパレードの出発点である日比谷の野外音楽堂に集まった人は、せいぜい600人前後かと思われる。ここで、スピーチや歌があったりしたあと、日比谷から銀座までパレードをしたが、この間少し人が増え、それでも1000人くらいだったと思われる。その中で東京在住と思われる外国人の参加が目立った。その多くはメディア関係者で、家族連れで来ている人もいたが、質の面はともかく数の上では少々寂しい状況であった。

銀座のパレードの終点では参加者よりも警備の警官のほうが目立つほどで、ある外国人特派員は、警備ぶりを見ながら、「日本もかつては相当激しいデモをやったのに、今はおとなしいものだ」という主旨のコメントをしていた。翌29日には京都でも同じパレードが催されたが、その状況については私にはまだ分からない。

世界の主要都市で行われている集会の模様も、テレビなどで報道されているが、それを見る限り日本のはかなり小ぶりな状況だったように思われる。

その原因は何かと歩きながら考えてみた。
気候変動に関する危機感や関心が日本では低くなったのかもしれない、あるいは気候変動対策に否定的な意見の人も決して少なくないと言われている。考えてみれば、日本人の心を不安にしているのは、気候変動だけではない。働く人の約4割が、非正規雇用である現実を考えるといつ職場を追われるか分からないといった不安は、気候変動よりも大きく差し迫っているかも知れない。あるいは、デモやパレードといった街頭での市民活動の有効性や意義に疑問を感じる人も多いのかもしれない。デモやパレードじゃ何も変わらないという冷めた意識かもしれない。しかしながら、関心が低かろうと冷めていようが、気候変動の危機は現実化しているので、この問題に対する対応を政治家や一部官僚にだけ任せておいていい筈がない。

私たちもそれなりの声をあげ、気候変動に国際社会が一致して取り組む必要性に無関心でないことをパリに集まった首脳や交渉担当者に伝える意義はやはりあると考えながら、銀座通りを仲間と共に歩いた。
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by JAES21 | 2015-12-01 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
明日に背を向け続けるのか、経団連”主流派”
今月の30日から始まるCOP21の舞台であるパリでは、大規模かつ無差別のテロによる惨劇がまた発生した。

その背景は複雑であろうが、私の頭にすぐ思い浮かんだのは、本年6月、ローマ法王が環境回勅なるものを発し、そのなかで地球環境問題の悪化と貧困、格差、差別などの社会問題とは同根であると指摘していることが思い浮かんだ。

まさに、グローバル規模で展開される人間の飽くなき経済の追求により発生した地球気候の大異変と、今回の残忍なテロとは、大きな目で見れば、ともに人間社会を破壊に導く同根の問題であるように私にも思われる。

その温暖化問題に対し、経団連の主流に位置する人たちの後ろ向きの姿勢は相変わらず続いているようだ。先月末に開催された関東経済産業局主催のセミナーにおいて、経団連環境本部の統括主幹は、パリで合意されるべき文書には拘束力のある新たな国際的枠組みを設定することに消極的な姿勢を示すとともに、日本での温暖化対策についてはキャップ&トレード型の排出量取引制度や炭素税、再生エネの固定買取制度のような規制的手法は導入すべきでないと強調していると言う(『エネルギーと環境』11月5日付)。

経団連の中でも、特に鉄鋼、電力、製紙、化学などの主流派は、CO2を環境アセス項目から外せと主張している。このような動きを見ていると、一体、経団連主流派は、気候変動時代に日本の産業界が向かうべき方向性や政策の在り方などに対しては、相変わらず後ろ向きで、現時点での利益確保に汲々としているように見える。これだと環境分野の日本の競争力の低下は否めないのではないか。

その一方で、経団連の有力な加盟会社であるトヨタは、本年10月に「環境チャレンジ2050」というポリシーを発表し、その中で、新車CO2ゼロ、ライフサイクルCO2ゼロ、工場CO2ゼロなど環境負荷ゼロチャレンジを高らかに発表している。

日刊工業新聞(11月13日付)によると、“環境負荷ゼロ”へアクセルを一気に踏み込んだ理由を内山田竹志トヨタ会長は、「今の変革ペースでは追いつけないスピードで、地球環境が失われている。高いレベルでのチャレンジが必要になった。」と説明しているという。

同じ経団連のなかでも専ら後ろをむいて日本の産業の健全な前進を邪魔するのに汲々としている業界と世界の規制の流れとマーケット動向を視野に入れ、早目早目に手を打っているトヨタのような会社との差が鮮明になっている。

どちらの方向が明日の日本社会を牽引するのに役立つか、遠からず歴史が証明するであろう。
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by JAES21 | 2015-11-17 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
石炭火力発電ラッシュを止めよ
電力改革の一環として、来年4月から電力小売りの全面自由化が始まる。

これまでの電力の需給構造を一変する大改革であるだけに、電力の供給側も需要(消費)者側も戸惑っているように見える。その中で、供給側は、なんだかんだ言っても結局消費者が求めるのは、一円でも安い電力だろうという前提の下か、現時点で一番安く発電出来る石炭火力発電所の新増設計画ラッシュを迎えようとしている。

石炭火力だけで2050年時点では2,320万kW程度の電力量が見込まれるというが、言うまでもなく、石炭は化石燃料の中でもCO2排出が最も多いだけでなく、それ以外の有害物質を放出するポテンシャルもあり、時ならぬ石炭火力発電計画ラッシュは極めて問題である。

一方、気候変動の状況を見ると、国内外を問わず異常気象の頻発だ。それに対して、国際社会が一丸となってどう対処するかの大議論のための会議がパリで年末に開かれようとしている。もちろん、現時点で、このパリ会議(COP21 )の結論がどうなるかは分からないが、少なくとも日本においては、温暖化対策にあまり熱心でないと思われる安倍政権ですら、2030年には2013年比で26%の削減を公約している。これまで本気で取り組んで来なかっただけに17年程度で26%削減は大仕事だ。さらに安倍政権は、2050年では80%の削減を表明している。

今や世界のコンセンサスとなりつつあるのは、2050年時点で、途上国を含む世界全体で、40%から70%の削減が必要と認識され、6月に開催され安倍首相も参加したG7首脳会議では、70%削減に出来るだけで近いところを目指す合意をみている。

さらにIPCCのレポートによれば、世紀末に向けて、温室効果ガスの排出をゼロまたはマイナスにしなければ、人類の文明社会は破たんするという危機感は、科学者のみならず世銀やOECDを含め多くのエコノミストにも、共有されている。

実際、欧米の主要な投資家の集まりにおいても、最早、石炭を含む化石燃料への投資はやめようという大きなうねりが出来つつあるという(9月9日付毎日新聞)。ノルウェー国会は今年5月末に世界の最大規模の運用資産(約107兆円)を誇る政府年金基金からの出資を全会一致で、石炭関連企業からの撤退を決めたと言う。またフランスのある生命保険会社も石炭投資からの引き上げを公表し、アメリカでは既に既設新設を問わず、石炭火力発電所への厳しいCO2排出規制を掛けることとしている。

このような流れの中で、日本は電力料金を一時的には安く供給出来るというだけで、石炭火力発電を推進しようとしている。

この計画に対し、前の望月環境大臣は、政府の排出削減目標との整合性などを考慮して、石炭火力の新増設に対し、待ったをかけている。しかしながら、電事連・鉄連などを含む経団連は、去る10月21日に丸川環境大臣に対し、CO2をアセスの評価項目から外せという主旨の申し入れをしたと報道されている。この申し入れは、走るのに邪魔だから、自動車からブレーキを取り去れと言っているのに等しい愚策と思われる。

なぜなら、石炭火力発電所を一度建てれば、40年前後は使い続けるわけで、CO2の垂れ流しが許されなくなるに違いない国際的な規制の流れを見ると、現時点では経済性のあるプロジェクトに見えても、あと5年、10年もすれば、経済的にも妥当性を示すことの出来ないプロジェクトになってしまうことは目に見えている。イギリスのNGOなどは、日本の石炭火力発電事業を厳しく批判している。日本の常識が世界の非常識である時代は早く終わって欲しいと思う。
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by JAES21 | 2015-10-27 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
丸川環境大臣の仕事ぶりを注視する
安倍内閣の今回の改造人事で丸川珠代氏が環境大臣に就任した。前の内閣と比べ、数の減った女性の大臣の一人であり、44歳の初入閣ということもあって、いろいろな意味で注目されるだろうが、彼女の前に積み残された問題は山積している。原子力防災担当大臣ということもあって、就任の翌日、早速、福島県を訪ね、内堀福島県知事に面会し、挨拶を交わしている様子をテレビで見た。

原発事故後、4年半を過ぎてもまだまだ放射線汚染問題の処理は道半ばであることもあってか、副知事時代からずっとこの問題に全力を傾けている内堀知事を表敬したのであろう。丸川大臣はにこやかに“ご指導よろしく”と語っていたが、この言葉が私には気になった。この“ご指導よろしく”は、多くの政治家が、選挙民や業界の人を前にしたときに多用している、言わば政界の業界用語。政治家として上から目線で偉そうにしゃべっているという反発を避け、謙虚であるという印象を与えるためか、この言葉は多くの政治家の口からごく日常的に出る言葉である。

また、当該案件について、何も知らないから、つい“指導”してほしいという本音が言葉になる場合もあるが、大臣職のスタートにあたって謙虚であること自体はなんら異とするところはない。しかし、丸川さんは、大臣として就任した以上、その直後から当該案件についての国務を担う最高責任者である。そのことを考えると、軽く”ご指導ください“と言って歩いているのでは一種の責任放棄。むしろ、国民や業界の人に向かっては「私は全力を尽くして案件にあたるので、ぜひ、ご協力やご支援をいただきたい」と言うべきであろう。

丸川大臣は、11日のNHK日曜討論会の番組において、COP21の重大性に触れていたが、まさに1か月半後に始まるCOP21は人類の将来を決めると言っても過言ではない現下では最重要会議であり、世界の心ある人が固唾を飲んで見守っている会議だ。これに臨む丸川大臣が、どのような覚悟と戦略を持っているのか、まだ分からないが、安倍首相のいう経済最優先に巻き込まれて、ごく短期的な経済成長のために日本国民はもとより、人類の未来を更なる危機に導くような道だけは取らないでほしい。

まず、差し当たっては、望月前環境大臣が道筋を付けた「石炭火力発電への待った」を継承すること。それは、再生可能エネルギーと省エネ等を促し、環境にとって良いだけでなく、日本の経済と中長期的な産業政策を考えると必要な施策であるのでぜひ頑張ってほしい。

私たちは、丸川大臣の一挙手一投足を注視し、必要があらば、批判もするし、また、強く応援もしたいと思っている。
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by JAES21 | 2015-10-13 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
by JAES21
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