環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

カテゴリ:加藤三郎が斬る( 158 )
米大統領選における気候変動問題の行方
候補者の戦いが連日熱く繰り広げられている。

アメリカの大統領選と言えば、共和党、民主党とも各州毎の予備選を入れると、ほとんど1年に及ぶ長い過酷な選挙運動ということになるのだが、今回の大統領選挙は異例づくしと言ってもいいのではないだろうか。

異例の第一の理由は、言うまでもなく、不動産王と呼ばれ、公職選挙で選ばれた政治経験がないドナルド・トランプ氏の型破りな言動である。最初の頃は、アメリカとメキシコの国境に大きな壁を作り、その費用はメキシコに持たせるとか、イスラム教徒の入国を禁止するとか、女性に対する侮辱的な発言とか、物議を醸す発言を繰り返して注目されたが、そのような言動は、これまでの選挙運動中、基本的には一切変わらず、共和党の正式大統領候補となった。その過程も、紆余曲折あったが、既得権益層を、言葉を選ばず攻撃している。特に共和党が長いこと大事にしてきた「自由貿易」に対し、国内の雇用を奪うなどの理由で、極めて否定的な意見を述べ、さらに移民に対しては厳しい立場を維持し、アメリカ第一主義を高らかに宣言している。しかも、競争相手に対しては、党内・外を問わず、悪口雑言、中傷発言を厭わず、極めて攻撃的な姿勢を貫き、共和党の正式候補者にたどり着いた。

一方、民主党のヒラリー・クリントン氏は、言うまでもなく、かつての大統領夫人であり、上院議員も務め、オバマ政権では国務長官を務めるなど、華麗と言ってもいい政治人生を過ごしてきたが、そのヒラリー氏に対し、トランプ氏は、言葉を選ばず、例えば既得権益層の「あやつり人形」であり、彼女は大企業の言いなりになっていると決めつけ、国務長官時代のメール問題なども激しく批判している。

このような悪口雑言の批判ではなく、私がぜひ聞きたいのは「環境・エネルギー政策」だ。当ブログでも紹介したと思うが、5月末にはトランプ氏は、「パリ協定」は拒否すると明言している。トランプ氏に限らず、アメリカの共和党のなかには、温暖化対策に極めて消極的…というよりむしろ否定的な人も多いので、せっかくオバマ大統領が苦労を重ねてたどり着いた「パリ協定」の発効も、難しくなることを恐れている。

一方、クリントン氏のほうは、もちろん、「パリ協定」を拒否するなどとは全く言っておらず、むしろ、気候変動対策を推し進める立場であるが、現時点で両者の間で、この重要問題をめぐる本格的な論戦は私が知る限りは無い。

日本の今回の参議院議員選挙でも、気候変動問題に対するまともな議論が無かったことを考えれば、無理もないことかも知れないが、それにしても人類の運命は、「パリ協定」をどう実施していくかに掛かっているかを思えば、この問題に重大な関心を寄せる世界中の人々が固唾を飲んで注視している筈だ。

11月8日の本選挙まで、あと3か月半ほど。
両党の大統領・副大統領候補が正式に決まった今、気候変動対策を含む持続可能な社会をどう作るかについても本格的な論争を期待したい。
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by JAES21 | 2016-07-26 17:46 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
参院選の忘れ物

参議院選挙が行われ、ある程度予想されていたことではあったが、やはり、自民・公明の与党が力を伸ばし、野党は、思ったほどの伸びは得られなかった。私自身も、この結果はある程度予想していた。なぜなら、野党側は、アベノミクス是か非か、あるいは憲法改正勢力の3分の2阻止などを争点として掲げて戦ったが、アベノミクスに変わる新しい経済の姿は、全く提示出来なかったし、憲法改正を大騒ぎしても、どこをどう改正するのかさえ、議論が全くない中での憲法議論では、多くの国民にとっては迂遠な問題であったであろうからである。

また、非常に残念なことであるが、参議院選挙では、気候変動対策は、話題にすらならなかった。世界中で、異常気象現象が頻発しており、それに対応するため、脱化石、すなわち化石燃料中心のエネルギー構造を再構築することを迫る「パリ協定」が合意されたにも拘わらず、である。おそらく日本では、気候変動問題といえば、気象の専門家やお天気キャスターの問題ぐらいでしか、捉えられていないのかも知れない。また、我々、気候変動に重大な関心を寄せる者が、「これは単なる気象問題ではないのだ、経済、価値観、ライフスタイルに係る問題だ」ということを多くの人に説得することが出来ていなかったことにもよるだろう。

今年の5月、安倍内閣が閣議決定した地球温暖化対策計画は、2030年までに2013年比で26%削減という中期目標を掲げた。残り時間わずか17年程で、日本の温室効果ガスを26%削減し、特に家庭部門や病院・学校・レストラン・ホテルなども含む業務部門は、ともに40%近く削減しなければならないと決めている。2050年に掛けては80%削減だ。

この内容は、極めて重要だ。
なぜなら、再生可能エネルギーの大幅普及とともに省エネ技術や蓄エネ技術の開発・普及にも大きく関わってくる。さらに言えば、我々の価値観、ライフスタイル、さらに交通・運輸など、まさに日本の経済全体の姿を相当大幅に改変しなければ、達成出来ない目標だからだ。

しかも、現在、政府与党は、原子力発電所の再稼働や、石炭火力の新増設を許容しようと動いている。この動きとパリ協定下で必要とされる日本の温暖化対策との間で整合性が明らかに取れていないのにもかかわらず、野党も与党も、今回の参議院選挙で、原発再稼働是か非かといった程度の問題でしか話題にしなかった。

一口で言えば、「パリ協定」下での気候変動対策がもたらす日本の経済構造全体の再構築、そして、それを可能にするための国民の意識価値観の大変革を伴うような大規模な経済政策論争を仕掛けられず、単にアベノミクスがいいか悪いかといった程度に矮小化してしまえば、勝負は初めからついていたようなものだろう。

今後、参議院選挙後の国会が再開されれば、憲法改正問題が、改めて浮上してくるであろう。私たちは日本国憲法のなかに気候変動対策などを視野に入れた「環境原則の憲法への導入」を提案しているが、これもまた、「環境権」是か非かだけでなく、経済社会そのものの再構築を目指す、大きな視点のなかで議論してほしいし、私たちもNPOとして頑張らねばと改めて思っているところだ。
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by JAES21 | 2016-07-12 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
本物の乱気流に突入した世界

今世紀に入るとすぐに、ニューヨークやワシントンで、イスラム過激派集団アルカイダによる同時多発テロが実行され、アメリカの富や軍事力の象徴となる建物が攻撃にさらされ、甚大な人的、物的被害を被った。当時のブッシュ大統領はこれを新たな戦争と呼び、「テロとの戦い」を宣言し、アフガニスタンやイラクでの本格的な軍事侵攻に繋がった。

それから十数年。先進国では、アメリカの都市だけでなく、ロンドン、パリ、マドリード、ブリュッセルなどの大都市とそこに生活する普通の人々がイスラム系テロリストの標的にされた。欧米の先進国では、いつ、どこで何が起こるか分からない不安が人々の心に忍び込んでいる。

過去15年間の特色は、西洋の民主主義・資本主義国が数世紀に亘って大事にしていた価値に対し、そこから疎外されていたイスラム系の過激派が攻撃対象とする類の戦いであった。しかし、去る6月23日、キャメロン首相が仕掛けたEUへの残留か離脱かの国民投票は、わずかな差とはいえ、離脱が上回ったために、イギリスのEUからの離脱が事実上決定してしまった。この衝撃は極めて大きく、イギリス国内だけでなく政治的に経済的に世界中を巻き込む大津波となって、各国を襲いつつある。日本にとっても例外ではなく、円がドルやユーロに対して高騰し、株価が下がるといったようなことが生じている。

この出来事の特色は、イスラム過激派が仕掛けたものでも何でもない。ヨーロッパの資本主義や民主主義の本流中の本流にいる人が仕掛けた政治的試みが、思わぬ結果を引き起こしたものだ。世界の政治経済が、まさに歴史的な乱気流に見舞われていると言っていい。まず、イスラム過激派によって引き起こされた21世紀の乱気流が、これまで数世紀に亘って、西欧社会のメインストリームを形作っていたエリート達によって増幅された格好だ。その結果もエリートを含め、政治・経済上の様々なシステムを乱気流に巻き込んだものであると私はこの現象を解釈している。

しかしながら、本物の乱気流は、すぐにでもやってくる。それは、「気候変動」という乱気流だ。実際、イギリスで国民投票が行われた日も、ロンドンの一部では1mほど浸水したところもあり、選挙にも行けなかった人が沢山出たという。同じ頃、中国では大竜巻が発生し、アメリカでは、西部では大山火事、南部から東部にかけては大雨による洪水が発生している。この異常気象という乱気流は、先進国、途上国、イスラム諸国を問わず、全てに襲いかかっているが、残念ながら、まだ、これへの警戒感も対処も十分でない。

この気候変動がさらに牙を剥いて人類社会に襲いかかれば、最早、イスラムのテロや株価の乱高下どころの話ではなくなる。この被害を少しでも軽減するために、昨年の暮れに190ヶ国を超す国によって合意されたパリ協定が一日も早く発効され、この人類社会を巻き込む本物の乱気流に備える体制が早急に出来ることを私は強く願っている。
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by JAES21 | 2016-06-28 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
オバマの苦悩

去る5月27日、当初、オバマ大統領の広島訪問においては、数分間の所感を発表するだけと思われていたが、実際には、改めて核兵器廃絶に向けての17分に及ぶ格調の高い演説があった。

広島・長崎市民だけでなく日本はもとより世界でこの問題に関心を持つ多くの人々の注目を集めた歴史に残る名演説であった。私などは英文と日本語の訳を見比べながら、何度も精読したものだ。読後の感想は、これはオバマ氏の“戦争と平和”論なのだと納得した。

その演説から一か月も経たない6月12日の未明。オバマ大統領の足元アメリカ・フロリダ州のオーランドという地方都市で銃器による大惨事が起こった。報道によると同性愛者が集まるナイトクラブに、アフガニスタン出身の両親を持つ29歳の男が一人で乗り込んで、なんと49人を殺し、53人にケガを負わせ、その男は、警察によってその場で射殺されたという。

銃による乱射事件が頻繁に起こっているアメリカでも、たった一人で自動小銃と拳銃だけでこれだけ多くの死傷者を出した事件は他に例が無いと言う。この事件を受けて、オバマ大統領は、早速声明を出し、アメリカにおける銃の規制を強化する必要性を改めて強調している。

広島では彼は、次のように述べている。「普通の人々は、戦争はこりごりだと考えている。彼等は、科学は生活をよりよくすることに集中するべきで、生活を台無しにすることに集中してはならないと考えるであろう。各国の選択が、あるいは指導者たちの選択が、この素朴な知恵を反映すれば、広島の教訓は生かされる。」と。

こう述べたオバマ大統領にとっては、核兵器どころか通常の兵器すらもアメリカでは未だに有効に規制することが出来ないでいる政治の現状に対し、恥じ入るばかりであろう。

銃の規制問題はアメリカにとって一筋縄ではいかぬ難しさを持っていることを私は理解しているつもりだ。それでも、やはりアメリカは、核兵器の国際的管理そして廃絶を目指すだけでなく、アメリカ国内においては通常の銃器をしっかりとコントロールすべきことをこの悲劇からの教訓とすべきではなかろうか。そうでないと、多数の犠牲者の霊は浮かばれなかろう。オバマ大統領の苦悩のほどが偲ばれるが、同時に政治家として銃器のコントロールへの道を敷いてほしいものだ。
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by JAES21 | 2016-06-14 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
トランプ氏の許しがたい無責任発言
アメリカの不動産王ドナルド・トランプ氏は、どうやら共和党の大統領候補としての指名を確実にした模様である。

トランプ氏と言えば、一年ほど前に大統領選に躍り出てからは、メキシコ・アメリカ国境に万里の長城に匹敵するような壁を築き、その壁を作る費用はすべてメキシコに負担させるとか、イスラム教徒の米国入国を一時全て禁止するなどの強硬な暴言を繰り返し、アメリカ国民はもとより世界中の良識ある人々を驚かせてきた。

この人種差別的発言、宗教に対する不寛容といったことで、政治家としての資質が疑われていた。それにも拘わらず、共和党内での数々の論戦を制し、ついに共和党の指名を確実にしたとメディアは報じている。

彼は、日本についてもたびたび言及している。
例えば、「日本が攻撃されたら、我々は直ちに助けに行かねばならないが、米国が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。不公平である。」「貿易で中国・日本・メキシコを打ちのめす」「日本が米軍駐留経費を全額負担しなければ、米軍を日本から撤退することを厭わない」「北朝鮮が核を持ってるなら日本も持った方がいい」などなどだ。

これらの発言は、大統領を目指すトランプ氏がそれなりの信念を持って発しており、またそれに対し、共和党を支持する多くの米国民が承認している以上、私たちが何を言っても仕方がないが、ただ、見逃せないのは、5月26日に、エネルギー環境政策に関連した演説を行い、大統領に就任したら、「パリ協定」を拒否する姿勢を示し、オバマ政権の環境政策を強く批判していることだ。

オバマ政権は、共和党の温暖化政策に対する理解と支持が極めて低いのを見越して、オバマ氏が大統領である間にパリ協定の批准手続きを済ませようとしているが、トランプ氏は大統領になったら、その協定参加を取り消すという考えを示した。

このパリ協定は、全世界の環境関係者はもとより経済やエネルギー政策を担当している政治家も含めて長い長い協議の末に、やっと昨年12月に190カ国の賛成を得て成立したもの。それを実現するために力を尽くしたオバマ政権の努力を一気に覆すような発言を平気でしているトランプ氏の無責任ぶりは、世界中の温暖化脅威を実感し、予測している多くのまともな人たちの失望というより怒りを買うに違いない。

かつてアメリカは、クリントン政権において署名した京都議定書をブッシュ政権になると直ちに葬り去った苦い過去がある。

そのブッシュ氏が8年に亘って政権にいたために、世界の温暖化対策が足踏みをし、そして、その間に異常気象などが激化するのを許した悪しき前歴が、アメリカの政治にはある。そのためにアメリカ人を含め、どれほど多くの人たちが、竜巻や洪水、海面上昇などの気候変動に悩まされ、苦しんできたのかを知ってか知らずか、トランプ氏の最近の無責任発言は見過ごすことが出来ないし、政治家としての責任ある発言を強く求めたい。
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by JAES21 | 2016-05-31 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
経営者の倫理感覚はどこに?
東芝、シャープ、三菱自動車といったつい先頃までは、日本を代表するような立派な企業が、いずれも経営が傾き、経営者が厳しい苦境に陥っているように思える。

東芝や三菱自動車の場合は、株主やユーザーに数字をよく見せようとするねつ造が問題にされており、シャープの場合は、経営判断を誤ったと言われている。社内で権力を持ち、高給を食んでいた経営者がこのような事態の中でのたうち回るのは仕方がないとしても、直接関係のない従業員や下請けなどの関連企業、さらには立地自治体にまで大きな影響を与えている。責任をどの程度認識しているのであろうか。経営者の不正や判断ミスで人生を狂わされてしまった人の数も多いだろう。

一体、今日本の企業社会に何が起こっているのであろうか。
一口に言えば、モラルの喪失ないしは荒廃と言えるかも知れないが、その背景にあるのはグローバル経済時代の競争の厳しさ、激しさが、経営者の心や目を狂わせてしまっているのではないだろうか。未だにグローバル経済は、いいものだと思っている人もかなりいるようだが、一皮むいて見れば、まさに弱肉強食の仁義なき競争の世界。その酷薄な競争の中に巻き込まれ、あるいは自ら巻き込んでいる経営者の心を支えている価値観や倫理観は一体どうなっているのであろうか。

グローバル競争ということで、原料や労働力コストを出来るだけ引き下げ、また税なども少なく払うことの出来る国へ企業が競って移動し、それも難しくなれば数字をごまかすというところに行かざるを得ないのだろうか。これは、VWの事例が示すように日本の企業だけでない。

こういう事態を眺めていると、経営者たちは一体どういう情報源を持って経営判断をし、また常日頃どういう人たちと交流し、情報を得ているのかと思わざるを得ない。

おそらく同じ経済人で、利益確保に汲々としている人たちとばかり付き合い、情報や意見を交換するが精一杯なのではないだろうか。経済至上主義とは無縁の人や団体、例えば、先頃日本でも有名になった「質素なだけで貧しくない」と公言するムヒカ・ウルグアイ前大統領のような人とは一切関わりがなかろう。そもそもそういう人たちと交流しようとか意見を聞いてみようなどという思いも、余裕も全くないのではなかろうか。

しかし、こんなことを繰り返していると、日本の優良企業の基盤が蝕まれていくようで心配だ。たまには、ムヒカさんのような人とも交流し、心を洗うような話を聞くことも大事だとは思うが、おそらくそんなことは思いつきもしないだろうと思う。
「グローバル経済」時代の経営者は、利益を求め、仁義なき競争地獄をさ迷うしかないのかも知れない。
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by JAES21 | 2016-05-17 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
三菱自動車の不正問題について思うこと

今月に入って三菱自動車の燃費データの不正問題が発覚し、大騒ぎになっている。何しろ三菱自動車と言えば過去に何度も不正を働き、経営そのものが危機に陥ったことは未だに記憶に新しいからだ。2000年7月、欠陥隠し問題が発覚し、そして2年も経たないうちに大型車のタイヤが脱落。母子三人が死傷するという痛ましい事故を起こしている。また、同じ年、山口県でクラッチ系統の欠陥により、運転手が死亡…といったように、次々と問題が発覚。リコール隠しも内部通報を受けて騒ぎになったのが、5年ほど前のことだ。

三菱自動車の今回の不正問題が、どのように展開するかは、まだ分からない。報道によれば、部門長の一存で、データ不正が為されたとなっているが、当該部長だけの問題なのか、企業ぐるみなのか、それが三菱自動車のどの車種までに及ぶのか、さらに言えば、三菱グループ全体に対する信頼問題へ発展するのか、いずれにしても日本を代表する企業の一つで、このような不正事件が起こったのは甚だ遺憾だ。

この問題は、三菱自動車だけに留まらない。昨年には、東芝の不正会計問題、さらにその前はフォルクスワーゲンのデータ不正問題も出ており、いずれもまだ火は消し止められていない。しかも、このような問題は、大企業だけでなく、ダイコーという産廃処理業者が廃棄すべき食品を消費者に提供する形で転売した問題もある。

このように、日本だけでなく海外の大きなブランド会社に至るまで、意図的な、しかも経営トップを巻き込むような不正がなされ、消費者に大きな損害を与える事案が相次いでいる。企業社会全体が病に侵されているのであろうか。改ざんし不正を行うという誘惑を断ち切れない状況にあるのは、何故なのだろうか。おそらく利益至上主義、そして、成長至上主義が大中小の企業を問わず、このような不正に駆り立てているのではなかろうか。

不正は一体どこから出てくるのか、現代の教育から道徳、倫理、そして人として生きるべき規範といったものが欠落してしまったからなのだろうか。これだけはしてはいけない、この一線は越えてはいけないという教育が、子供の頃からきちっとなされていたのであろうか。おそらく、倫理とか道徳とかそんな綺麗ごとを言っていたのでは、この熾烈なグローバル競争時代を生き残ることができないという思いが、つい不正に手を染めてしまうのではなかろうか。

三菱や東芝の不正を見ていると、経営者や会社の幹部は、一体どういう人と付き合っていたのだろうか、例えば私たちのような貧しくとも高い志を持ったNPOとも付き合っていただろうか。多分、NPOとまともに付き合うなどということは今の日本の経営者の多くには、思いもよらぬことだろう。しかし、「経済」にまみれ切っていない人たちの生き様に多少なりとも触れていたら、こんなことにはならなかったのではないかと思うのは、我々のうぬぼれであろうか。

経営者の視野が頓に狭くなって、利益至上主義に目がくらんで、それ以外の価値に目が入らなくなった社会の怖さを思わせる事件である。
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by JAES21 | 2016-04-26 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
浄化槽という優れもの

私たちの家庭からでも事務所からでも、旅館・ホテルからでも、トイレや台所、風呂場などから生活排水が出てくる。それを処理する方法は、大きく二つある。

一つは、公共下水道を通じて処理するもの。もう一つは、「浄化槽」と言われる生活排水処理システムで処理するものだ。

下水道は、言うまでもなく、地下に長い管渠を埋め、その管渠を通じて多数の家々や事業所、工場などからの排水を集め、最終処分場で処分し、川や海に浄化された水を流していく。しかし、これは相当大がかりな公共事業となり、もちろん時間も掛かるし、作った後も維持管理にかなりのお金が掛かる。

一方、浄化槽というのは、公共下水道が敷設されていないところ、典型的に言えば都市の郊外、農村部、そういったところで、各戸の庭などに個別に埋設して、そこで個別に処理をし、排水を流すシステムだ。これは、数戸集まって処理することも可能だが、原則として、発生源の近くで分散して処理する生活排水システムだ。

私は30年程前、この浄化槽システムを発展・普及させる行政を担当した。当時、厚生省の環境整備課というところで、これのための全国システムを作る作業を3年間ほどやり、これがなかなか優れものであることを実感した。

どう優れているのかというと、コンパクトな施設で、汚いトイレ排水なども十分にきれいに処理が出来るし、下水道と違って長い管渠がいらないので、道路を掘り起こしたり、事業に多額の費用が掛かったりしない。さらに、規模が小さくて済むので、維持管理にも多額の費用がかからず、財政に優しいシステムである。かつては安かろう悪かろうと言われた時期もあったが、合併浄化槽の開発など技術の発展で、処理効率は公共下水道に決して負けるものではない。

この施設は、日本では人口が減少局面に入り、地方の都市で高齢化や過疎化が進む中では、環境にも地方財政にもやさしい優れものの生活排水処理システムと言える。

今、世界を見ればアジア、アフリカ、中南米など、人口が増加し都市化が進み、生活排水処理に困る沢山の地域がある。国連では昨年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(いわゆるSDGs)が採択され、その中で「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことが課題とされている。私は、日本で開発された浄化槽システムこそ、この課題に応えられる有力なシステムであると確信している。

日本には、和食、日本酒、カラオケ、柔道、空手といった優れものがいくつもあり、世界に広がっている。同様にこの生活排水処理システムも、日本だけで使われるのはもったいない。海外でも大いにその力を発揮してほしいと思っている。
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by JAES21 | 2016-04-12 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
大混迷時代が訪れるか?

昨日、時事通信社から『繁栄と混迷の戦後70年~日本と国際社会の歩み』と題する一冊の本が送られてきた。これは、戦後70年経ったということで昨年、過去70年の変化を通貨「円」、冷戦終結と新たな戦争、少子高齢化と社会保障、戦後スポーツの軌跡、女性の社会進出など全部で20項目に分け、概観したものである。

私は、この第6パート「経済成長と環境保護」というところに登場しているので、この本を贈られたのである。
戦中に生まれた私としては、戦後70年は、繁栄と混迷の時代であったというのに異論はない。

しかしながら、今起こりつつある大混迷の時代に比べれば、はるかに幸せな時代であったように思われる。第二次世界大戦の終了とともに東西冷戦が厳しくなり、日本はアメリカを盟主とする西側陣営について、民主主義と経済成長をひたすら追求し、平和と人権の保護と物的豊かさを一人一人に届けるという政治環境の中にいたわけで、混迷があったとしても、今から考えれば、「小」混迷であったと言っても過言ではなかろう。

21世紀に入って動き出した大きな変化は、それ以前の1、2世紀に亘って常識とされ、大前提とされた様々な原理原則が崩れつつある。議会制民主主義もその本家である欧米でも揺らぎ始めている。人は生まれながらに自由で平等といった理念もヨーロッパ諸国に押し寄せる難民に対する対応を見てみれば、決して、生まれながらに自由で平等でないことがはっきり分かる。過去には物の豊かさを一人一人に、出来るだけ格差のない形で届けることが出来たが、今はそれも滞り、格差と貧困が、豊かであったと思われるアメリカ、ヨーロッパ、日本などでも目に付くようになり、そのような貧困と不平等に対する明確な異議申し立てが、信じられないようなテロや人権破壊行為に見て取れる。

かつてなら、そのような蛮行に対し、欧米の民主主義勢力は、十分にコントロールする力を持っていたが、その力が失われつつあるのが、ヨーロッパでの極右勢力の伸張や最近のアメリカ大統領選挙におけるトランプ候補の発言を見ると分かる。過去の原理原則が至る所で破られつつある現状を見ると、最早、2030年、2050年に向けての世界は大混迷となり、そして、残念ながら恐らく大流血を伴うような時代になっていかざるを得ないかと危ぶまれる。

日本は現状では、平和で安全な暮らしを辛うじて保っているが、それも一つ二つの激しいテロが日本で起これば、恐らくガラス細工のように大きく崩れていくだろう。私には、戦後70年が歪んではいても人類最後の「繁栄」の時代であったように思われ、これからは危険一杯の大混迷時代を迎えざるを得ないと思えてならないが、この見方は悲観的過ぎるだろうか。
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by JAES21 | 2016-03-29 17:32 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)
やはり、脱原発しかない
東日本大震災から、ちょうど五年経ったこともあって、3月11日前後に新聞もテレビも、この事故が何だったのか、今後どうなるのかといった内容の特集が続いている。私自身も注視しているが、やはり、津波もさることながら原発事故の重さは、5年経ってますます重大になってきている。

私自身は、原発については、事故の前からゆるやかな脱原発論者であった。その理由は簡単で、使用済みの核燃料についても、放射性廃棄物についても処理処分の目途が全くついていない段階で、原発を動かすことは将来世代にツケを残すだけの極めて無責任な政策であり、原発依存は出来るだけ早い時期に止めるべきだと思っていたからである。しかし、現実に3.11で、東電福島第一原発があのような事故を起こして、しかも5年経った今も、本質的には何ら解決していないことを見るにつけ、それまでの私の見方は軽すぎたと思うようになった。

福島事故の25年前にチェルノブイリ事故があったが、その時、東京電力のある人が、「あの事故はソ連だから起こった。日本では起こり得ない。まして、優秀な社員の揃っている東電では絶対に起こらない。」と言うのを聞いた。随分、自信のある発言だと軽く聞き流していたが、ソ連で起こったことも、アメリカで起こったことも、日本で起こったことも、やはり、原発という今日の人間の手には負えない不完全な技術に付きまとう本質的な事故だったと思う。従って、フランス、中国、韓国、インド等どこの国でも、起こり得ることで、一度、過酷事故が起これば、福島の人が味わったような塗炭の苦しみが起こり得る。

3月12日付の朝日新聞に、福島県浪江町の馬場町長へのインタビュー記事が大きく載っているが、政府が今進めている原発の再稼働について聞かれた町長は次のように答えている。

「事故の究明も検証も出来ておらず、教訓も得ていない中での再稼働は明らかにおかしい。私どものように、すべてのものが壊され、自分の家、地域から離れた広域避難がもう五年。みな、事故で人生を完全に変えさせられた。そんな生活をする覚悟はあるのか。」

こう厳しく問うている。これを読んだときに、現ローマ法王が原子力発電事業について、「人間の傲慢さを示すバベルの塔のようなもの」だと発言したことを思い出した。原子力に限らないが、科学技術で何でもコントロールできるという人間の傲慢さを捨てなければならない。それができないとすると、世界のどこでも東電福島の悲劇が繰り返される。

電気は何も原発でのみ作られるわけではない。風力、ソーラー、波力、バイオマスなどからでも電気は作れる。そういう安全安心な技術で作られた電気で、私たちの生活を照らせばよいのだ。やはり、脱原発しかない。
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by JAES21 | 2016-03-15 17:30 | 加藤三郎が斬る | Trackback | Comments(0)



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
by JAES21
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