環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

カテゴリ:加藤三郎が斬る( 158 )
真実の再構築
私たちが生きていく上で、大中小様々なことを正しいものとして、受け止めて生活している。例えば、朝、テレビの画面上に表示された時刻、これは正しい。また、交差点で直進が青だとすれば左右の信号は赤であると信じている。また、大新聞社やテレビ局などが報じる様々なニュースは、解釈やオピニオンは、社や局によって違ったとしても、事実そのものはまさか嘘ではないと思って生活している。

もしこれらがほとんどいい加減なものだとすると、例えば、朝7時03分とテレビに表示されていても、それが全くあてにならないとしたら、何をあてにすればいいのか。信号が青だから直進しているのに、交差している左右の道路ももし同じ青になっていたら、とても怖くて、車ひとつ動かすことが出来ない。

このように、解釈やオピニオンは様々あれど、事実そのものは正しいという前提で、私たちはそれに依拠し、安心して生きている。随分前から、インターネット上で発信されている情報のなかには、かなりいい加減なものがあるから注意せよと伝えられていた。大新聞や教科書に載っている情報とは異なり、真実であるかどうかの検証無しに垂れ流されているネット情報のなかには嘘があるので、気を付けろと言われていた。ところが、今回のアメリカの大統領選挙における所謂トランプ現象のなかで、科学的に全く根拠が無いと思われる情報や、全くの偽りである情報が意図的に、そして組織的に流されていたらしい。

12月19日付の朝日新聞には、「偽ニュース 米国席巻」という見出しの下で、偽ニュースがネット上で様々に拡散し、それによって発砲事件が起きたり、あるいは、大統領選挙の結果にも影響を与えるようなことがアメリカで見られるということを大きく報じている。もちろん、これはアメリカだけの話でなく、使おうと思えば、政敵を倒すために、あるいは、競争会社の信用を落とし、損害を与えるために意図的な偽情報や誤った数字を流しているとすれば、最早、我々は何を信じて生きていけばいいのか、分からなくなってくる。いわば、情報を巡る戦国時代の様相になる。

私たちが、ネット上や大新聞といえども、そこに出てくる事実なるものは、実は真実ではないものが意図的に流されるのが常態になったら、極めて深刻な大混乱に陥るかと思われる。街を歩いていて、誰にどこから発砲されるか分からないのと似た状況となる。そのような情報犯罪が、日常茶飯になったら、大変だ。表現の自由を護れという主張もあろう。恐らく、混乱の果てに真実を再構築しようという政治的、社会的、道義的動きが出てくると思われるが、そこにたどり着くまでには、あと何年いや何十年掛かることやら、と思わざるを得ない。


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by JAES21 | 2016-12-20 17:30 | 加藤三郎が斬る
憲法に環境原則を導入すべき

衆議院・参議院の憲法審査会が憲法改正問題の議論を再び開始した。現段階では、まだまだ入り口の議論であって、現行憲法のどこをどう変えるかという議論には全く至っていないが、私たち環境文明21は10年前から現行憲法に環境原則を導入し、また、憲法の前文の中にも持続可能な社会を築く必要性を強調し、具体的な案文も提案している。

なぜ憲法の中に環境原則を入れることを主張するかの理由は、一口で言えば、地球上の全ての命と暮らしの基盤である環境の劣化が今世紀に入って著しく、これを放置しておくと、気候異変のように重大な問題になるという認識があるからだ。

数十年前から、科学者や識者によって指摘されていることであるが、最近の環境劣化のスピードは、誠に凄まじいものがある。その中で日本の現況を見ると、危機感も薄く、政策対応は、まるで緩くなってしまっている。そういう状況を変えるためにも、憲法論議の中で環境政策を国政の中できちっと位置付ける議論をすべきだと考えている。まして、「パリ協定」が発効した今となっては、一世紀余に亘って使い続けた化石燃料から少しずつ離脱し、省エネと再生可能エネルギーで、私たちの社会を維持することにならざるを得ないが、そのような政策の大転換や、私たちの暮らしを支えるエネルギーを転換するためにも、憲法上の位置づけが一層必要になったと考える。

安倍内閣の改憲姿勢には、私たちは危惧を感じているので、積極的に改憲論議を進める気は、今はないが、それでも、「パリ協定」が求める経済・社会を早急に築くことだけを考えても、最早、この議論を避けては通れないと考えている。


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by JAES21 | 2016-12-06 17:30 | 加藤三郎が斬る
COP22の概要
去る11月7日から18日まで、国連気候変動枠組み条約の第22回締約国会議(COP22)がモロッコのマラケシュで開催された。

この会議では、昨年12月に合意された「パリ協定」実施のための細則を決めるための手続きが主要な議題であった。
大方の予想よりも早い11月4日の「パリ協定」の発効という極めて歴史的な第一歩を踏み出したという祝福ムードの中、会議は始まったようだが、3日目の11月9日にアメリカの次期大統領にトランプ氏が選出されたニュースが伝わるとマラケシュの会場にも大きな衝撃が走ったとのことである。
何せ、オバマ政権が力を込めて推進してきた気候変動対策には、ハナから関心を示さず、大統領になった暁には「パリ協定」はキャンセルすると選挙戦中繰り返し述べていたトランプ氏が大統領になると、長年、大変なエネルギーを注いで作り上げた「パリ協定」という国際社会の合意事項が根底から覆されるのではないかと多くの人が恐れたからである。
しかし、トランプ氏の登場がある意味、マラケシュ会議の参加者の結束を促す効果もあったと思われる。
実際、「パリ協定」が、正式に施行される前の2018年に細則を定めることなど、今後の作業の大まかなロードマップがマラケシュで合意されたことは、ひとまず、安心材料であり、関係者の努力に敬意を表したい。

ところで、その細則というのは、どのようなものか。
それは「パリ協定」を実際に動かすための必要な事項で、例えば下記のような作業が挙げられる。

①各国の温室効果ガス削減約束をどのように作成し、それをどのような形で事務局に提出するか。
②その約束をどのように維持していくか。
③進行する温暖化に対して、適応するための報告書作りのガイドライン。
④様々な市場メカニズムが考えられるが、そのときのダブルカウントを防止する規定。
⑤各国が定期的に透明性のある対策実施状況を報告する際の締約国同士の評価ルール。
⑥「パリ協定」の実施状況を定期的に確認する仕組み作り。
⑦温暖化の脅威にさらされ、現実に被害を受け始めている発展国への資金や技術、能力開発での先進国からの支援の仕組み。

日本の法制度に絡めて言うと、法律は出来たので、その法律の下での政・省令に相当するものを詰めていく作業を2018年に完成するということだ。持ち時間はせいぜい2年しかないが、分科会を作って、それぞれのテーマに則して検討されることになろう。

この会議を締め括るに当たり、参加首脳による「マラケシュ行動宣言」が取りまとめられた。
その宣言では、2016年だけでも、既に世界中の気候変動に関して、異常な勢いで進んでおり、この勢いは最早、後戻り不可能だとの危機認識を示した。また、「私たちの仕事は、今や動き出した対策努力の勢いに乗って温室効果ガスの排出を急速に削減し、適応努力を強化し、そのことを通じて、持続可能な開発を支持することである。最高度の政治的な誓約により、気候異変と戦うことを最優先課題とする。」というものであった。


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by JAES21 | 2016-11-22 17:30 | 加藤三郎が斬る
「パリ協定」の発効と企業の対応力

11月4日、「パリ協定」はついに発効し、7日からは、細則などを決めるための国際会議COP22がモロッコのマラケシュで開始した。日本が国会で「パリ協定」の批准にもたついている間に、世界は大きく動き出したのだ。

振り返ってみると、90年代には日本は間違いなく世界の温暖化対策のトップグループにいた。90年10月には、法律もないのに、地球温暖化防止行動計画を日本政府は策定し、国民や企業に温暖化対策に参加することを呼び掛けていた。97年にはCOP3を日本の古都京都に招致し、温暖化対策の歴史的な第一歩である「京都議定書」を締結するホスト国としての力を世界に示した。まさにこのとき、トヨタはハイブリッド車プリウスを世界に向けて売り出している。

このように、90年代の末くらいまでは、間違いなく日本は温暖化対策に熱心に取り組み、世界をリードする一翼を担っていたが、今世紀に入ると徐々に遅れだした。そのきっかけは、01年にブッシュ政権が成立すると米国は「京都議定書」から直ちに離脱してしまったことである。これを見ていた日本の経団連の電気・鉄鋼・化学などの業界は、アメリカが参加しないのに、日本ばかりが損をするとの思いからか、気候変動対策に消極的になっていった。経産省が言い出したか、経済界の一部が言い出したかは定かではないが、この辺りから「京都議定書は、安政の不平等条約以来の不平等条約であり、こんな条約を結んだ日本は誤った選択をした」と言って憚らなかった。当時、私は、ずいぶん大胆なことを言うとある意味感心していたが、何のことはない。アメリカが止めたからアメリカに従っただけである。当時も今も、日本の経済界と産業行政官の間には、アメリカのことしか見ていない人がいる。しかし、そのアメリカのオバマ政権は、8年間、終始気候変動に取り組み、フランスを中心とするEU諸国とともに中国・インドを巻き込み、「パリ協定」を作らせ、一年足らずの短期間で発効させた。

このパリの会議に、ビル・ゲイツを始め、たくさんの欧米企業のCEOが集まっていたのは、企業者として時代の流れの方向感覚の鋭さを示している。つまり、気候異変の現状から見るととんでもない異常気象とそれに伴う甚大な被害が予想されるなかで、これに対抗するための新しいビジネスを起こす確信を持っていたからであろう。日本の企業者の中にも、もちろんそのようなセンスを持った人もいたと思うが、しかし、経団連・経産省に代表される一部産業界には、センスも力もなかったと言わざるを得ない。

私は、この日本の遅れは、一世紀以上に亘って温室効果ガスを相当量出し続け、豊かな工業国を築き上げた日本としての責任感の薄さがまず以て気になるし、それとともに世界の産業界の潮流からさらに後れをとることも心配である。

環境文明21は、そんな思いから、この11月30日(水)の午後、「世界に後れを取ったか!?日本企業の気候変動対策」 と題して、シンポジウムを開催する。このシンポジウムにおいては、アメリカに滞在していて、アメリカの企業の動きに詳しい田中めぐみさん、日本の環境政策の動きや、企業の動きをフォローしている朝日新聞の石井徹さん、長期の脱炭素発展戦略に向けて研究している京大名誉教授の松下和夫さんを招いて、大議論をするつもりである。ぜひ、このシンポジウムに多数のご参加を期待している。





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by JAES21 | 2016-11-08 17:30 | 加藤三郎が斬る
不連続時代への突入か
人間社会の動きを私なりに見ていると、世界は徐々に連続的に変化しているというよりは、過去の経験からは推しはかれないほど、荒々しく大きくそして不連続に変化している。つまり想定外の事柄が次々に生起するようになったと思われる。人間社会が不連続時代に突入した感を深くしているのは私だけではあるまい。気候の異変もその一つだ。これまで経験したことのないような雨の降り方、つまりゲリラ豪雨が頻々と起こっている。まさに異常が常態になりつつある。

そのため、突然の洪水や浸水、あるいは竜巻、突風などで家財や農作物に甚大な被害を被っている人たち、さらに交通機関の混乱などで失った時間。このような辛さや戸惑いはいたるところに見られる。もちろん、これは明日にも我が身にも起こりうることなのだ。

政治の世界の乱調ぶりも甚だしい。およそこれまで見たことのないような現象が世界各地で発生している。アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の言動は、無責任で品格に欠け、大統領候補というより人間としての資質が問われるレベルだ。

トランプより少し遅れてフィリピンに登場したドゥテルテ大統領もトランプ氏に劣らない乱暴な言動だ。トランプ氏の場合は、11月8日までは、米国大統領の候補者に過ぎないが、ドゥテルテ氏の場合はフィリピン国民によって民主的に選ばれたれっきとした大統領だ。彼がどの程度本気かは別として、オバマ大統領を口汚くののしり、つい最近では、軍事面経済面で米国と決別する旨発言している。私には、この発言は、政権として何の準備も戦略もなく語られたとしか思えないが、大統領の口から出たもので最早冗談では済まされない。

英国のEU離脱劇に見られた政治家たちの言動もこれまでの常識を超えたものがあったと思われる。これらの諸現象を眺めていると、様々な思いがこみ上げる。第二次世界大戦後、70年の時間をかけて積み上げられた自然を管理する方法や社会を統治するガバナンスを担った主流派エリートたちはコントロール力を失い、立ちゆかなくなっている。社会が混迷に陥った隙に、まさに不連続的に起きた現象のように思える。これまで通りにはいかないことが誰の目にもはっきりしてきた。

しかし、人間の長い歴史を振り返ると、大きな変化が起きるときには、それまでの常識からはアブノーマルと思われる現象や人物が現れることがある。今、我々を襲いつつある気候異変も、また、我々を呆れさせているトランプ現象やドゥテルテ発言も、もしかすると時代の大きな変化を画しているのかもしれない。もちろん、その大変化が人間にとってプラスとなるのか地獄へつながる道になるのかは、まだ分からない。しっかり、見ていく必要があろう。


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by JAES21 | 2016-10-25 17:30 | 加藤三郎が斬る
「パリ協定」11月4日に発効
国際社会としての気候変動対策を導く「パリ協定」が11月4日に発効することとなった。早期発効を心から願っていた私にとっても想定外の早さだが、日本の国会は未だ審議すらしていない。TPPの批准を優先しようとした経済最優先・安倍政権の本件に対する真剣度の不足と国会対策の見通しの甘さが、はからずも露呈した格好だ。マスメディアなどは、早速に、日本の批准の遅れを批判しているが(例えば、10月10日付朝日新聞社説)、そのメディアそのものも、どれほど本気で「パリ協定」の意義や日本社会、特に産業界に与える甚大なインパクトと変革の可能性を報じてきたか、甚だ疑問だ。

早い話が、本年7月の参院選においても、与野党いずれも気候変動対策と「パリ協定」との関わりを主要争点にしたところは無かったし、私の知る限り、このことを真剣に取り上げ、論じたマスメディアはほとんどなかった。日本の政治家もメディアも、アベノミクス是非論議とごくわずかに原発再稼働に争点を当て、あるいは意識的に当てさせられて、その土俵の中で踊っていたようなものだ。

どうしてこうなったか。私は、安倍政権の中枢部に「気候変動対策は、日本経済、すなわちアベノミクスに悪影響を与えることはあっても、良いことは何もない」と思い込んでいる人が中枢部におり、影響力を奮っているのでは、と思わずにはいられない。安倍首相はG7の議長として、オバマさんやヨーロッパ首脳の力で「パリ協定」については前向きな首脳宣言を書き込まざるを得なかったが、先月の所信表明演説では、「パリ協定」については全く言及しなかった。

日本の国会で、批准が遅ければ、G7議長としての面子や信頼が損なわれているだけでなく「脱化石」に向けて一斉に走り出している欧米企業と日本企業との間の距離はますます開いていくだろうことも、私は心配している。


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by JAES21 | 2016-10-11 17:30 | 加藤三郎が斬る
灼熱化、気候異変に変えたら

今から27年前の1989年、私は環境庁の国際課長の職にあったが、その時から今日の地球温暖化や気候変動問題への取り組みを環境行政の課題として開始した。その前年には、国連(WMOとUNWP)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)という専門パネルを設置して、活動を開始していたからである。当時、世界の専門家は、英語では地球温暖化をGlobal warming と表現し、気候変動はClimate Change と書き表していた。当時はまだ、IPCCに集う専門家の間でも、本当に地球温暖化が発生しているのか、あるとしても、それが、人間の経済活動に起因しているのかについては、異論も多く確定していないかった。

しかし、気候変動に関する研究成果やデータが着実に積み上がってくるにつれて、今日、温暖化は疑いなく進行しており、その原因も人為活動によることが確実となり、昨年、190を超すすべての国によって合意されたパリ協定においては、原因物質であるCO2などの温室効果ガスの大幅削減を実施し、今世紀後半においては「実質ゼロ」とすることまで明記された。

このように厳しい目標を掲げ、削減をすべての国に迫るまでになった背景には、IPCCによる着実な科学的・専門的知見の集積もあったが、それに加え、近年の激しい気候異変が地球上のいたるところで発生し、多くの人が現実に様々な被害を被っている現実があろう。最近の気候変動対策に関する国連会議(COP)で、巨大な台風やハリケーンあるいは海面上昇などによる甚大な被害を現実に受けている国々の代表の悲痛な叫びにも似た訴えが、豊かさに慣れた国々の代表をも明日は我が身と大きく動かしている。

このように考えると、従来、使い慣わしてきた「地球温暖化」や「気候変動」という表現は今のままでよいのだろうかと思ってしまう。

「温暖」という日本語表現は、危険を表すよりはむしろ、ポジティブで緩やかさを表し、また「変動」も変化と同様、中立的(ニュートラル)なニュアンスを帯びており、その語自体では危機や脅威を示していない。しかし、温暖化も気候変動も今や社会にとって重大な危機、脅威、となりつつある以上、例えば、温暖化は灼熱化、気候変動は気候異変と表現し直したら、どうであろうか。ついでに言えば、温室効果ガスも灼熱化ガスはいかがであろうか。

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by JAES21 | 2016-09-27 17:30 | 加藤三郎が斬る
気候変動の犠牲者

今年に限ったことではないが、近年、気候の不安定や異常と思われる気象現象がますます顕著になってきた。

この夏、日本を襲ったUターン台風(台風10号)の動きなど、その典型例であろう。これまで考えられなかったところで、台風が発生し、そして、西にふらついて行ったと思うとUターンをして、強力な台風となり、岩手県に上陸し、青森を突き抜けて、北海道を襲った。まさに、これまで、経験のないようなコースを辿る暴れ台風であった。

このような異常な気象現象は、もちろん日本だけでなく世界の各地で発生している。私は、毎朝、衛星放送で主要国のニュース番組を見ているが、アメリカのABC放送などは、ほとんど毎日のように、アメリカ国内で発生している異常気象(竜巻、山火事、大雨・洪水など)を伝えており、ABCはまるで気象専門チャンネルになったかのように錯覚するほどだ。

このようなことは無論アメリカだけでもなく、本年6月には、フランスやドイツで、大洪水が発生し、少なからぬ被害をもたらした。パリを流れるセーヌ川が増水し、川岸に近いルーブル美術館は、収蔵品を安全な場所に移す必要に迫られたほどである。ルーブルだけでなくパリの地下鉄も浸水し、鉄道サービスが一時的に休止するほどになった。同じころ、インドでは熱波が襲い、50℃を超える気温になったとも伝えられている。

当たり前だが、日本であれ、どこの国であれ、ひとたび異常気象に襲われると様々な被害が発生する。人命が失われたり、住宅やビルが損壊したり、道路や橋、鉄道が流されたり、そして、農作物が大被害を被ったり。人の生活基盤が根っこから奪われ、復旧のための費用も膨大になる。私たちの記憶にまだ新しいのは、昨年9月、鬼怒川の増水で、破堤した茨城県常総市の甚大な被害がある。一年が経過したが、被害の傷はまだ癒えていない。

台風にしろ、竜巻にしろ、大雨にしろ、昔からあった自然現象であるが、近年は、そのパワーや頻度などの程度が誠に問題だ。その背後にあるのは、海水温の上昇である。それをもたらしているのは地球温暖化であるのは疑いようもない。温暖化対策をしようとすれば、様々にコストが掛かるが、その対策コストよりも被害によるコストのほうが数倍大きくなるというのが、専門家の一致した意見である。しかし、様々な被害が発生していることと温暖化対策の必要性とはなかなか結びつかない。今も起こっている各地の洪水や浸水の被害者も自然現象によって運悪く被災したと思う人は多くとも、人間が長いこと怠ってきた温暖化対策の不十分さにより、人命や財産の損失が発生していると明確に認識している、つまり、端的に言えば、不十分な気候変動対策によって犠牲者になっているという認識はおそらく少ないであろう。このことが温暖化対策のパワーを弱めている一原因となっていると思うと残念でならない。


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by JAES21 | 2016-09-13 17:30 | 加藤三郎が斬る
AIの光と影
AIの光と影

最近は、新聞を見ても雑誌を見ても、AI(人工知能)という文字を見ない日はない状態だ。AIそのものは、かなり早くから注目され、各国の技術者らによって、いわば、夢の技術として開発されてきたとのことだが、ここ最近では、人間の能力に比べ、AIの優秀さが目に見える形で、私たちの眼前に立ち現れ始めた。

例えば、世界トップクラスの棋士をAIが打ち負かしたり、AIが自ら運転する完全自動車が2020年代には街中や高速道路を走り回る勢いだという。確かに、安全運転に不可欠な反射神経などが鈍くなる高齢者や目の不自由な人にとっては、AIによる車の自動運転は大いに助けとなるだろう。しかし、将来は、鉄道車両の運転手はもとより、タクシーやバスの運転手まで、不要になるだろうと言われている。このように、AI技術の進歩により、自動車などの運転手だけでなく、清掃、会社の受付、介護、医療診断など極めて広範な職場でAIを装備したロボットに人間が追い出されるという深刻な問題にならぬかとかねてから懸念していたが、このままでいくとその懸念は、一層深まるようである。

8月24日付の毎日新聞は、一面トップで、イスラエルがAI搭載の軍事用ロボット開発で世界の最前線に立っているとの記事を掲げ、詳しく紹介している。これによると、今や軍事の面で、無人の飛行機、軍用車、戦車など、まさに人殺しのための武器が人間の判断と手を離れ、AIそのものの手に移ろうとしている。戦場などで人格なきAI武器の前に立たされた人の恐怖や絶望を想像しただけで私の心は凍り付く。

英国の著名な宇宙物理学者ホーキング博士らは、2015年7月、殺人ロボット(致死性自律型ロボット)の開発の禁止を求める公開書簡を発表したというが、私も同感だ。室内の掃除をするくらいのロボットなら、まだ許せるが、人が乗っていない戦車や飛行機などの殺人兵器が人間による遠隔装置によってではなく、AI自身の判断で人間に向かってくるという状況を考えると、最早AIの光と影などという表現すら甘い気がする。

皆さまはいかがお考えだろうか。


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by JAES21 | 2016-08-30 17:30 | 加藤三郎が斬る
多様な若者像
ここ2週間ほど、新聞やテレビなどのマスメディアから流れてくる情報は、オリンピックと高校野球などスポーツ関連一色の感が深い。悲惨な戦争や卑劣なテロの流血ニュースがトップを占めるよりは遥かにましであり、大歓迎である。

連日、賑わせているオリンピック競技では、日本の若者の活躍振りに、スポーツには縁遠い私まで、大いに興奮させられ、喜ばされている。これまでのところ、今回のオリンピックでは、おそらく大方の日本人の期待以上に多くの競技で、若者たちは好成績をあげているのではないだろうか。頼もしい限りで、日本もまだまだ大丈夫かなという思いを強くしたのは、高齢者の私にとってこの夏のうれしいプレゼントだ。

そのような最中の13日付の読売新聞は、全国の18、19歳を対象に先月の参議院選挙に関連した世論調査の結果を報じている。スポーツ関連記事のなかで埋没してしまった感もあるが、私にとっては興味深い結果を示している。特に感じ入ったのは、参院選で重視した争点への回答(3つまでの複数回答)である。高い順にあげれば、「景気や雇用」が52%、「医療や年金など社会保障」が34%、「憲法改正」26%、「教育問題」25%であるのに対し、「環境問題」9%、「人口減少対策」7%、「エネルギー政策」6%と、この3つの項目は、各段に低い評価となっている。

私にとってこの結果は、若者にとっても足元の景気と社会保障問題は重視するが、中長期的にみれば、今の若者世代に極めて影響を与える環境問題・人口減少・エネルギー問題に対する関心がかなり低いことが気になる。

若者に限らず、現在の日本人は最早政治に中長期的な視点にはほとんど関心を示さず、もっぱら足元の経済問題に関心を寄せる結果、日本の政治はますます短期的な視野となり、本来重要な、時には苦渋を伴う増税のような話は常に先送りされる傾向にある。18、19歳の若者にとっても同じような傾向をこの世論調査が示している。

このような結果が出たのには、我々大人の生き様や教育に大きな欠点があると考えさせられたわけだ。もちろん、この世代だけで200万人を超す若者全てがこのように考えているわけではなかろう。また、大人と一口に言ってもその意識や見方は様々だが、私としては、今回のオリンピックで見られるようなファイティングスピリットやそこに至る精進の重要性と同様、中長期的な将来に向けての視点は特に若者には欠かせないのではないか、その視点が、今回の読売の調査結果を見る限り、弱いのではないかというのが気になったところである。
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by JAES21 | 2016-08-16 17:30 | 加藤三郎が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
by JAES21
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