環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

石炭火力発電ラッシュを止めよ
電力改革の一環として、来年4月から電力小売りの全面自由化が始まる。

これまでの電力の需給構造を一変する大改革であるだけに、電力の供給側も需要(消費)者側も戸惑っているように見える。その中で、供給側は、なんだかんだ言っても結局消費者が求めるのは、一円でも安い電力だろうという前提の下か、現時点で一番安く発電出来る石炭火力発電所の新増設計画ラッシュを迎えようとしている。

石炭火力だけで2050年時点では2,320万kW程度の電力量が見込まれるというが、言うまでもなく、石炭は化石燃料の中でもCO2排出が最も多いだけでなく、それ以外の有害物質を放出するポテンシャルもあり、時ならぬ石炭火力発電計画ラッシュは極めて問題である。

一方、気候変動の状況を見ると、国内外を問わず異常気象の頻発だ。それに対して、国際社会が一丸となってどう対処するかの大議論のための会議がパリで年末に開かれようとしている。もちろん、現時点で、このパリ会議(COP21 )の結論がどうなるかは分からないが、少なくとも日本においては、温暖化対策にあまり熱心でないと思われる安倍政権ですら、2030年には2013年比で26%の削減を公約している。これまで本気で取り組んで来なかっただけに17年程度で26%削減は大仕事だ。さらに安倍政権は、2050年では80%の削減を表明している。

今や世界のコンセンサスとなりつつあるのは、2050年時点で、途上国を含む世界全体で、40%から70%の削減が必要と認識され、6月に開催され安倍首相も参加したG7首脳会議では、70%削減に出来るだけで近いところを目指す合意をみている。

さらにIPCCのレポートによれば、世紀末に向けて、温室効果ガスの排出をゼロまたはマイナスにしなければ、人類の文明社会は破たんするという危機感は、科学者のみならず世銀やOECDを含め多くのエコノミストにも、共有されている。

実際、欧米の主要な投資家の集まりにおいても、最早、石炭を含む化石燃料への投資はやめようという大きなうねりが出来つつあるという(9月9日付毎日新聞)。ノルウェー国会は今年5月末に世界の最大規模の運用資産(約107兆円)を誇る政府年金基金からの出資を全会一致で、石炭関連企業からの撤退を決めたと言う。またフランスのある生命保険会社も石炭投資からの引き上げを公表し、アメリカでは既に既設新設を問わず、石炭火力発電所への厳しいCO2排出規制を掛けることとしている。

このような流れの中で、日本は電力料金を一時的には安く供給出来るというだけで、石炭火力発電を推進しようとしている。

この計画に対し、前の望月環境大臣は、政府の排出削減目標との整合性などを考慮して、石炭火力の新増設に対し、待ったをかけている。しかしながら、電事連・鉄連などを含む経団連は、去る10月21日に丸川環境大臣に対し、CO2をアセスの評価項目から外せという主旨の申し入れをしたと報道されている。この申し入れは、走るのに邪魔だから、自動車からブレーキを取り去れと言っているのに等しい愚策と思われる。

なぜなら、石炭火力発電所を一度建てれば、40年前後は使い続けるわけで、CO2の垂れ流しが許されなくなるに違いない国際的な規制の流れを見ると、現時点では経済性のあるプロジェクトに見えても、あと5年、10年もすれば、経済的にも妥当性を示すことの出来ないプロジェクトになってしまうことは目に見えている。イギリスのNGOなどは、日本の石炭火力発電事業を厳しく批判している。日本の常識が世界の非常識である時代は早く終わって欲しいと思う。
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by JAES21 | 2015-10-27 17:30 | 加藤三郎が斬る
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環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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