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  環境文明21は、環境負荷の少ない持続可能な環境文明社会の構築を目指す環境NPOです。
  

真実の再構築
私たちが生きていく上で、大中小様々なことを正しいものとして、受け止めて生活している。例えば、朝、テレビの画面上に表示された時刻、これは正しい。また、交差点で直進が青だとすれば左右の信号は赤であると信じている。また、大新聞社やテレビ局などが報じる様々なニュースは、解釈やオピニオンは、社や局によって違ったとしても、事実そのものはまさか嘘ではないと思って生活している。

もしこれらがほとんどいい加減なものだとすると、例えば、朝7時03分とテレビに表示されていても、それが全くあてにならないとしたら、何をあてにすればいいのか。信号が青だから直進しているのに、交差している左右の道路ももし同じ青になっていたら、とても怖くて、車ひとつ動かすことが出来ない。

このように、解釈やオピニオンは様々あれど、事実そのものは正しいという前提で、私たちはそれに依拠し、安心して生きている。随分前から、インターネット上で発信されている情報のなかには、かなりいい加減なものがあるから注意せよと伝えられていた。大新聞や教科書に載っている情報とは異なり、真実であるかどうかの検証無しに垂れ流されているネット情報のなかには嘘があるので、気を付けろと言われていた。ところが、今回のアメリカの大統領選挙における所謂トランプ現象のなかで、科学的に全く根拠が無いと思われる情報や、全くの偽りである情報が意図的に、そして組織的に流されていたらしい。

12月19日付の朝日新聞には、「偽ニュース 米国席巻」という見出しの下で、偽ニュースがネット上で様々に拡散し、それによって発砲事件が起きたり、あるいは、大統領選挙の結果にも影響を与えるようなことがアメリカで見られるということを大きく報じている。もちろん、これはアメリカだけの話でなく、使おうと思えば、政敵を倒すために、あるいは、競争会社の信用を落とし、損害を与えるために意図的な偽情報や誤った数字を流しているとすれば、最早、我々は何を信じて生きていけばいいのか、分からなくなってくる。いわば、情報を巡る戦国時代の様相になる。

私たちが、ネット上や大新聞といえども、そこに出てくる事実なるものは、実は真実ではないものが意図的に流されるのが常態になったら、極めて深刻な大混乱に陥るかと思われる。街を歩いていて、誰にどこから発砲されるか分からないのと似た状況となる。そのような情報犯罪が、日常茶飯になったら、大変だ。表現の自由を護れという主張もあろう。恐らく、混乱の果てに真実を再構築しようという政治的、社会的、道義的動きが出てくると思われるが、そこにたどり着くまでには、あと何年いや何十年掛かることやら、と思わざるを得ない。


# by JAES21 | 2016-12-20 17:30 | 加藤三郎が斬る
世界に誇れる国とは?!
スウェーデンで開催されたノーベル賞授賞式。
今年は日本人としては、大隅良典教授お一人の受賞となり、やや報道も少なかったように感じたが、それでも教授の素晴らしいお人柄と信念は報道の端々から感じられた。

特に、教授は、受賞当初から、「科学をすぐに実践的に使うことが求められる」として、基礎研究が疎かにされている昨今の日本の実情を憂いていたが、スウェーデンでの記念講演でも、「科学を何かに役立てるためのものではなく、文化としてとらえ、育んでくれる社会になってほしい」と強く訴えたという。

実際日本では、数年前から大学にも”稼ぐ“ことが要求され、直接利益に結びつかない研究費は年々削減され、研究者の確保さえ難しい状況が続いているという。近年の日本のノーベル賞受賞も、数十年前の功績に対するものが殆どで、これから先を心配する声は、受賞された方々からも度々聞かれる。

スウェーデンは、ノーベル賞授賞式を国民的行事としてとらえ、国民挙げて、受賞者を歓迎し、その功績を称える誇り高き伝統がある。
私自身、環境先進国でもあるスウェーデンをたびたび訪問しているが、社会福祉はもとより、気候変動問題なども踏まえた国としての持続性戦略をしっかり組み立てている。そのうえ、市民社会の育成にとても熱心で、市民教育やNGO活動にも多額の予算を充てている。スウェーデン人と結婚したある日本女性は、離婚後も「安心・安全が確保されているスウェーデンに老後も住み続ける」という。

一方日本では、公的教育予算は削減され、市民社会育成の予算もほんのわずかである。
反面、2017年度防衛予算は過去最大の5.1兆円と増え続け、様々な課題のあるカジノを含むIR法案もいとも簡単に成立しようとしている。

大隅教授のメッセージを聞いたスウェーデンの人々は、こんな日本をどう思うだろう。

安心・安全に暮らせる国を目指し、持続可能な国家戦略も組み立てているスウェーデンに比べて、環境、福祉、文化、教育など、様々な政策で後れを取っている日本。
ノーベル賞も一つの機会ととらえ、国会でも、市民の間でも、世界に誇れる国とはどのような国なのか、もっともっと真剣に議論する必要があると強く思う。


# by JAES21 | 2016-12-13 17:30 | 藤村コノヱが斬る
憲法に環境原則を導入すべき

衆議院・参議院の憲法審査会が憲法改正問題の議論を再び開始した。現段階では、まだまだ入り口の議論であって、現行憲法のどこをどう変えるかという議論には全く至っていないが、私たち環境文明21は10年前から現行憲法に環境原則を導入し、また、憲法の前文の中にも持続可能な社会を築く必要性を強調し、具体的な案文も提案している。

なぜ憲法の中に環境原則を入れることを主張するかの理由は、一口で言えば、地球上の全ての命と暮らしの基盤である環境の劣化が今世紀に入って著しく、これを放置しておくと、気候異変のように重大な問題になるという認識があるからだ。

数十年前から、科学者や識者によって指摘されていることであるが、最近の環境劣化のスピードは、誠に凄まじいものがある。その中で日本の現況を見ると、危機感も薄く、政策対応は、まるで緩くなってしまっている。そういう状況を変えるためにも、憲法論議の中で環境政策を国政の中できちっと位置付ける議論をすべきだと考えている。まして、「パリ協定」が発効した今となっては、一世紀余に亘って使い続けた化石燃料から少しずつ離脱し、省エネと再生可能エネルギーで、私たちの社会を維持することにならざるを得ないが、そのような政策の大転換や、私たちの暮らしを支えるエネルギーを転換するためにも、憲法上の位置づけが一層必要になったと考える。

安倍内閣の改憲姿勢には、私たちは危惧を感じているので、積極的に改憲論議を進める気は、今はないが、それでも、「パリ協定」が求める経済・社会を早急に築くことだけを考えても、最早、この議論を避けては通れないと考えている。


# by JAES21 | 2016-12-06 17:30 | 加藤三郎が斬る
負のレガシーにならないように
オリンピック・パラリンピックの開催地問題がメディアでも盛んに報じられている。

元々今回の開催については、開催の意義、開催時期、費用、そして利権問題などもあり、環境NPOの間では歓迎の声は少なかった。

しかし決まった以上は、少しでも、環境配慮型の持続可能な社会づくりに役立つものにしてほしいと思っていたが、これまでの流れを見ていると、どうもそうではないようだ。

まず開催時期である。
気候変動が深刻化する中、真夏の開催はあまりにリスクが多すぎ、選手や観戦者に熱中症などで死者が出るのではないかという懸念である。ミストの散布や舗装の工夫などが検討されているようだが、それだけで解決するほど簡単なものではないように思う。死者が出た場合、だれが責任を取るのかも心配である。
この件については、まさに放映権が絡んで真夏の開催になったそうだか、元環境大臣の小池都知事はもとより、時期をずらそうという声はどこからも聞こえてこない。

費用の問題も然りである。
6月末時点で、国の借金1053兆円、国民1人当たり830万円という日本。どこに新しい施設を、しかも開催後は負の遺産になりそうな施設を次々に作るという余裕があるのか不思議である。そんなお金があるのなら、道路が陥没したり、豪雨で下水管があふれ町が浸水したりしないよう、老朽化したインフラの整備、気候変動時代にも適応できるようなインフラの整備に費やしてほしいものだ。
しかし、そうはならないその裏には、無責任体質の他、やはりこのことで大きな利益を得る人がいるからだろう。

4年に一度のオリンピック。選手にあこがれ、夢を持ち、頑張る子供もいるだろう。選手の活躍が人々に多くの感動や勇気を与えることも事実である。
しかし、その裏にある現実、アスリートファーストではなく権力や利権優先の現実があることも、私たちはしっかり認識し監視する必要があると思う。

「レガシー」とは遺産という意味だが、今のような流れでは、2020年のオリンピックは、次世代に「負の遺産」を残す可能性の方が大きいのではないか、という気がしてならない。
「決まったことは変えられない」ではなく、次世代に真の「レガシー」を残すために50年100年後を見据えて、施設建設や運営方法を考えてほしいものである。


# by JAES21 | 2016-11-29 17:30 | 藤村コノヱが斬る
COP22の概要
去る11月7日から18日まで、国連気候変動枠組み条約の第22回締約国会議(COP22)がモロッコのマラケシュで開催された。

この会議では、昨年12月に合意された「パリ協定」実施のための細則を決めるための手続きが主要な議題であった。
大方の予想よりも早い11月4日の「パリ協定」の発効という極めて歴史的な第一歩を踏み出したという祝福ムードの中、会議は始まったようだが、3日目の11月9日にアメリカの次期大統領にトランプ氏が選出されたニュースが伝わるとマラケシュの会場にも大きな衝撃が走ったとのことである。
何せ、オバマ政権が力を込めて推進してきた気候変動対策には、ハナから関心を示さず、大統領になった暁には「パリ協定」はキャンセルすると選挙戦中繰り返し述べていたトランプ氏が大統領になると、長年、大変なエネルギーを注いで作り上げた「パリ協定」という国際社会の合意事項が根底から覆されるのではないかと多くの人が恐れたからである。
しかし、トランプ氏の登場がある意味、マラケシュ会議の参加者の結束を促す効果もあったと思われる。
実際、「パリ協定」が、正式に施行される前の2018年に細則を定めることなど、今後の作業の大まかなロードマップがマラケシュで合意されたことは、ひとまず、安心材料であり、関係者の努力に敬意を表したい。

ところで、その細則というのは、どのようなものか。
それは「パリ協定」を実際に動かすための必要な事項で、例えば下記のような作業が挙げられる。

①各国の温室効果ガス削減約束をどのように作成し、それをどのような形で事務局に提出するか。
②その約束をどのように維持していくか。
③進行する温暖化に対して、適応するための報告書作りのガイドライン。
④様々な市場メカニズムが考えられるが、そのときのダブルカウントを防止する規定。
⑤各国が定期的に透明性のある対策実施状況を報告する際の締約国同士の評価ルール。
⑥「パリ協定」の実施状況を定期的に確認する仕組み作り。
⑦温暖化の脅威にさらされ、現実に被害を受け始めている発展国への資金や技術、能力開発での先進国からの支援の仕組み。

日本の法制度に絡めて言うと、法律は出来たので、その法律の下での政・省令に相当するものを詰めていく作業を2018年に完成するということだ。持ち時間はせいぜい2年しかないが、分科会を作って、それぞれのテーマに則して検討されることになろう。

この会議を締め括るに当たり、参加首脳による「マラケシュ行動宣言」が取りまとめられた。
その宣言では、2016年だけでも、既に世界中の気候変動に関して、異常な勢いで進んでおり、この勢いは最早、後戻り不可能だとの危機認識を示した。また、「私たちの仕事は、今や動き出した対策努力の勢いに乗って温室効果ガスの排出を急速に削減し、適応努力を強化し、そのことを通じて、持続可能な開発を支持することである。最高度の政治的な誓約により、気候異変と戦うことを最優先課題とする。」というものであった。


# by JAES21 | 2016-11-22 17:30 | 加藤三郎が斬る



環境文明21の共同代表「加藤三郎」「藤村コノヱ」の両名が、時事問題等を斬る
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